764. 喜界島の琉球石灰岩より産出した単体サンゴの放射年代
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概要
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喜界島の更新統琉球石灰岩のうち, 上嘉鉄の北方約650m・高度40mの地点付近に分布するものは, その特徴的な岩相(典型的なDunham, 1962, のgrainstone)と, 保存のよい多くの種類の単体サンゴを産することなどで, 古くから注目されてきた。本研究では, それらの中から3種(Trochocyathus hanzawai, Micrabacia japonicaおよびFlabellum rubrum)を選んで, ^<230>Th/^<234>U法による放射年代測定を試み, 平均82, 000±2, 000年の年代値を得た。この値は, 世界各地(例えば, 西インド諸島Barbados島やニューギニアHuon半島など)で, その存在が確認されている一亜間氷期の年代と一致する。一方, 当時の礁石灰岩は, 現在城久南部に発達する海成段丘の構成物として, すでに確認されている(Konishi et al., 1974)。すなわち, 城久南部にみられる礁石灰岩がサンゴ礁として形成されていた当時, 上述のgrainstoneはその礁前縁相として堆積したものと考えられる。そして, このgrainstoneと礁石灰岩との現在の分布高度差(114〜144m)は, もし両者がこれまでに等量の構造運動(垂直変動)をうけてきたとすれば, 大よそgrainstoneの堆積深度を示しているといえる。しかし, 島内で確認される断層から局地的な変動量の違いも考慮しなければならず, 実際の堆積深度は120m以浅と推定される。この推定値は, 単体サンゴおよび蘚虫類の研究からYabe and Eguchi (1932)やKataoka (1961)によって推定されたgrainstoneの堆積深度と決して矛盾しない。また, 以前Konishi et al. (1970, 1974)が報告した55, 000〜65, 000年前のYounger Limestone Member of Riukiu Limestoneの礁性サンゴに富む石灰岩の分布地点が, このgrainstoneの分布地域と近接し, 形成時代と堆積深度が全く異なると思われる両者が段丘構成物としてみられることから, 上嘉鉄北方に広がる高度40mの平坦面は, 一部が堆積面一部が侵食面であると考えられる。
- 日本古生物学会の論文
- 1983-07-15
著者
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