602. 北太平洋地域の Swiftopecten
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概要
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Swiftopectenは, 北日本から記載された現生のPecten swiftii BERNARDIを模式種として, HERTLEIN (1935)によって提唱されたものである。筆者は以前, 日本の化石および現生のPecten swiftiiについて研究し, その地質学的意義について考察を行なった(MASUDA, 1959, 1960)。その際, 筆者は北アメリカ西海岸の新生界から報告されている, いわゆるSwiftopectenと日本のSwiftopectenを比較検討する必要があることを指摘した。今回, 筆者は北アメリカ西海岸から報告されたすべてのSwiftopectenについて検討した結果, アラスカから記載されたPecten (Chlamys) kindlei DALL, Chlamys (Swiftopecten) donmilleri MACNEILおよび, 北カリフォルニアからARNOLD (1906) が報告したPecten (Chlamys) parmeleei DALLは, swiftiiとシノニムであることが明らかになったほか, 中部-南部カリフォルニアから知られているparmeleeiはswiftiiの亜種と考えるべきであることが明らかになった。しかし, 西海岸におけるこれら以外のものは, Swiftopectenとは別のグループに入れられるべきであると考えられる。この結果, Swiftopectenは東アジアから北樺太, カムチャッカを経てアラスカ, さらに西海岸に沿って南カリフォルニアまで分布していたことになる。日本ではswiftiiの最初の出現はMiddle Mioceneであるが, アラスカではLate Mioceneに出現し, Early Plioceneには北カリフォルニアまで分布した。後, 北方に移ってMiddle Pleistoceneに絶滅している。一方swiftiiから進化したと考えられるparmeleeiは, Middle Plioceneに中-南部カリフォルニアに出現したが, その末期には絶滅してしまったと考えられる。Swiftopectenのこのような地理的・地質学的分布は, 北太平洋地域における古地理の変遷と密接な関係にあることは明らかである。
- 1972-09-30
著者
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増田 孝一郎
Department of Geology, Miyagi University of Education
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増田 孝一郎
Department Of Geology Miyagi University Of Education
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