585. 北米産数種の Patinopecten について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
筆者は以前, 日本産のいわゆるPatinopectenについて研究し, Patinopectenに属するものは現生・化石共に日本には存在しないことを明らかにした (MASUDA, 1963)。その際, 北米西海岸各地の新生界から報告されたPatinopectenのすべての種が, 果して真のPatinopectenに属するものか否か疑問であると報告した。今回, 北米西海岸から報告されたPatinopectenについて検討した結果, メキシコ西海岸の鮮新統からHANNA and HERTLEIN (1927)および DURHAM (1950)が記載したPatinopectenの三種, すなわち, P. bakeri, P. bakeri diaziおよびP. marquerensis は, Patinopectenとは全く別系統のAmussiopectenに近縁のものであることが明らかになった。また, ワシントン州のMontesano FormationからADDICOTT (1966)が報告したPatinopecten, n.sp.は, 日本産のいわゆるPatinopectenに対して筆者が提唱したMizuhopectenの新種であり, さらにMACNEIL (1967)が, カナダ西海岸の鮮新世と思われる地層から記載したPatinopecten (Mizuhopecten) skonunensisは, MizuhopectenではなくPatinopectenそのものであることが明らかになった。今回の研究によって, Patinopectenの地理的分布が, 従来考えられていたよりもずっと北にかたよっていたことが明らかになったので, 暖流系の貝類その他の化石が, 寒流系のPatinopectenと共存していることの解釈についての従来の議論に終止符が打たれた。さらに, 鮮新世初期には, 東アジアから移動したMizuhopecten, Swiftopectenその他が, 北米西海岸北部に分布していたことが確認された。従って, 本研究の結果は, 北太平洋地域における新第三系の対比, 古動物地理区の変遷, 古地理の解釈などの上に重要な意義を持っている。
- 1971-09-20
著者
-
増田 孝一郎
Department of Geology, Miyagi University of Education
-
増田 孝一郎
Department Of Geology Miyagi University Of Education
関連論文
- 585. 北米産数種の Patinopecten について
- 556. 仙台付近の鮮新世穿孔貝とその巣穴
- 602. 北太平洋地域の Swiftopecten
- 636. 仙台市名取川流域茂庭層産海棲化石その 2 : 茂庭層産プロブレマティカ
- (24) 東北地方に於けるグリン・タフの問題
- 東北地方内陸油田基盤のグリン・タフ(出羽丘陵及び奥羽脊梁山地グリン・タフ研究グループ)
- 伊豆半島の地質学的諸問題
- 589. 北米および南米北部の Amussiopecten
- 547. 仙台付近の火成岩中のサンドパイプ
- 516. 能登半島東印内層の軟体動物化石群-III ; 新種の記載および若干の既知種の考察
- 512. 能登半島東印内層の軟体動物化石群-II : 貝化石群集と種の記載
- 509. 能登半島東印内層の軟体動物化石群-I : 貝類化石群の一般的考察