環境における毒物 : 有機スズ化合物による神経毒性(<特集>野生動物医学研究の実際)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
トリブチルスズ(TBT)やトリフェニルスズ(TPT)などの有機スズ化合物は,ポリ塩化ビニールの安定剤,農業用の殺菌剤,船底や漁網の防汚塗料などとして広く使用されてきた。しかし,その使用が急速に広がるにしたがって環境に与える影響も危惧されてきた。TBTやTPTは内分泌撹乱物質としてイボニシやカキなどの貝類にインポ***をもたらすことが知られている。このような生殖異常に加えて,哺乳動物に対する毒性では,振戦,痙攣,運動失調,自発性不随意運動の発現など各種神経機能障害を引き起こすことが報告されている。TBTやTPTによる神経症状では中枢神経系の病理組織学的変化が乏しい。したがって,有機スズ化合物は細胞膜イオンチャネルや薬物受容体などの機能に影響を与えることにより神経毒性を誘発すると考えられる。最近我々は,有機スズ化合物による神経毒性の発現機序を解明する一環として,後根神経節細胞におけるテトロドトキシン抵抗性の電位依存性Naチャネルを対象として,同チャネル活性に対する4種類のスズ化合物の効果を検討した。本稿では,これらの結果を紹介するとともにスズ化合物による神経毒性の発現機序について考察する。
著者
-
小森 成一
岐阜大学応用生物科学部獣医薬理学分野:岐阜大学大学院連合獣医学研究科病態獣医学連合講座
-
小森 成一
岐阜大学農学部獣医学科家畜薬理学教室
-
海野 年弘
岐阜大学応用生物科学部獣医薬理学分野:岐阜大学大学院連合獣医学研究科病態獣医学連合講座
-
海野 年弘
岐阜大学農学部獣医学科家畜薬理
-
稲葉 祐次
岐阜大学農学部獣医学科家畜薬理学講座
関連論文
- O-5.マウス小腸のコリン作動性神経-平滑筋のシナプス伝達におけるM_2とM_3ムスカリン受容体サブタイプの役割(消化管1,一般口演,一般演題,第51回日本平滑筋学会総会)
- 14.マウス小腸平滑筋細胞における電位依存性Caチャネルの抑制性調節に関わるムスカリン受容体サブタイプ(一般演題「消化器1」,第48回 日本平滑筋学会総会)
- 環境における毒物 : 有機スズ化合物による神経毒性(野生動物医学研究の実際)
- モルモット回腸縦走筋のノルアドレナリンに対する収縮及び弛緩反応の発現に関与するアドレナリン受容体の薬理学的性質
- Mechanism of muscarinic receptor-operated cation channel activation in guinea-pig ileal smooth muscle (生体機能と創薬シンポジウム2004--イオンチャネル機能と細胞障害--創薬を目指して)
- 腸平滑筋のムスカリン受容体M2とM3を介する収縮反応:ノックアウトマウスを用いた比較・解析 (生体機能と創薬シンポジウム2004--イオンチャネル機能と細胞障害--創薬を目指して)
- モルモット回腸平滑筋のムスカリン作動性非選択的陽イオンチャネルの活性化におけるホスホリパーゼCの関与について(一般演題「イオンチャネル1」)
- 46. 腸管平滑筋における各種ムスカリン作動薬のM2あるいはM3受容体性反応の活性化効力の比較
- 消化管平滑筋におけるムスカリン受容体作動性陽イオンチャネルの活性化におけるM2およびM3サブタイプの役割 (生体機能と創薬シンポジウム2004--イオンチャネル機能と細胞障害--創薬を目指して)
- ニワトリにおける採血条件と血中カテコールアミン濃度
- 鳥類結直腸の神経による興奮性支配の血中ニューロテンシンによる調節の可能性
- 77. モルモット回腸平滑筋細胞におけるATP感受性Kチャネル活性の調節機構
- モルモット回腸平滑筋のβエスシンによるスキンド化標本におけるカルバコール誘発収縮反応のニューロテンシンによる増強効果
- 鶏の結直腸とRemak神経幹の抽出物中に存在する平滑筋抑制物質の性質
- ニワトリのレマック神経節に存在する平滑筋収縮活性ペプチドのニワトリ・ニューロテンシンとしての同定