琵琶湖湖岸浅層地下水の水質季節変化
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概要
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琵琶湖西岸の和邇浜地区で,1986年3月末から9月まで湖岸浅層地下水の主要溶存成分濃度の季節変化を調べた。その結果次のことが明らかになった。地下水の水質組成はNa^+,Cl^‐,Ca^2+およびHCO_3^‐が主成分で,ステッフダイアグラムで示された水質パターンには季節変化がほとんど認められなかった。また,溶存成分濃度(平均値)は潅漑初期の河川水および用水路の水の濃度より高かった。陽イオン並びにCl^‐・SiO_2などの平均濃度は田植え期の潅漑水の各成分濃度と同程度であった。そして,Na^+およびCl^‐などの主成分濃度は,春(4~5月)と夏(8月)に高濃度のピークが現われる周期的な季節変化を示した。しかしSO_4^2‐やSiO_2などの主要成分には明瞭な季節変化が認められなかった。以上のことは,和邇浜地区の湖岸浅層地下水の主成分(特にCl^‐)濃度が潅漑水の影響を強く受けていること,また,この季節変化が農業活動と密接に関係していることを示唆する。Seasonal change of the major ions concentrations in the shallow groundwater at the shore of the west coast of Lake Biwa was investigated during from late March to September,1986.The dominant constituents of the groundwater were Na^+,Ca^++,Cl^- and Hco-3 and the pattern of the major ions represented by means of the Stiff diagram showed no appreciable difference among different seasons.The total dissolved concentrations were higher than those of river and canal water in the beginning of irrigation period.The average concentrations of Cl^-,SiO_2 and major cations including Na^+ and Ca^++ showed the same level to those found in irrigation water in the rice-planting season.The concentrations of the dominant constituents such as Na^+ and Cl^- showed cyclic change which exhibit a high concentration in both spring and summer seasons.However,the concentrations of some major constituents showed no apparent seasonal difference.The present results indicate that the major ions concentrations(especially for Cl^-)in the shallow groundwater near shore are markedly influenced by the irrigation water,and the seasonal changes of these components may be closely related to the agricultural activities.
- 大阪教育大学の論文
著者
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小林 政雄
大阪教育大学自然研究講座
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小林 正雄
大阪教育大学自然研究専攻
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石田 泰子
大阪市立都島小学校
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小林 正雄
大阪教育大学地学教室
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小林 正雄
大阪教育大学
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田中 崇子
大阪府立香里ヶ丘高等学校
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