琵琶湖沿岸帯における湖底漏出地下水の水質 : 電気伝導度の測定結果
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概要
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1983年及び1984年両年の6月から10月まで,琵琶湖の沿岸帯でシーページメータを用いた直接法により湖底漏出地下水を採取し,電気伝導度を測定した。この調査の前に,先ず,シーページメータに補集された漏出地下水と湖底下の地下水の水質関係を調べるために,2地点で湖水,漏出地下水及び湖底地下水の電気伝導度を測定した。その結果,漏出地下水の電気伝導度は湖底面下0.3~1.5m深の地下水と同じ値を示す地点と,20~60%低い値を示す地点があり,漏出地下水と湖底地下水の水質が地域により相異することがわかった。志那町和迩浜の,湖岸に直交する横断線上の8地点,並びに湖岸近くの近接した6地点で採取した漏出地下水の電気伝導度は,横断線上では離岸距離の増大に伴ない指数関数的に減少した。一方,湖岸付近では,汀線近くで大きく変化し,地点距離がわずか100m離れただけで約2倍の差がみられた。またこれらの漏出地下水電気伝導度の地点分布型は漏出速度の地点分布型とよく一致した。琵琶湖周囲沿岸帯の湖底漏出地下水電気伝導度は,南湖と北湖の東岸一帯で高く,北湖の西岸と北端一帯で低い傾向を示したが,特に,北湖で地域差が顕著であった。この地域差には湖底堆積物,漏出速度並びに人為的作用などの因子が影響を及ぼしていると推定された。以上のことは,湖へ流入する地下水の水質調査では,沿岸帯,特に汀線付近の湖底漏出地下水の直接測定が重要であることを示唆する。Seepage groundwater flowing through the lake bed in the littoral zone of Lake Biwa was collected by direct method using seepage meter from June in 1983 to October in 1984,and electric conductivity(E.C.)of sampled water was measured.The main results are as follows:1)Electric conductivity of lake water,seepage groundwater and groundwater below the lake bottom was measured at two station for a preparatory work,and it was found that E.C.of seepage groundwater collected by seepage meter was almostly equal to that of groundwater in the stratum of 0.3-1.5m deep below the lake bottom at one station.At the other station,however,E.C.of seepage groundwater was 20-60% lower than that of groundwater in the stratum 0.3-1.5m deep below the lake bottom.2)At Wani beach,Shigacho,E.C.of seepage groundwater collected at eight stations on transect at right angles to the shore line decreased exponentially with increasing distance from shore.E.C.of seepage groundwater collected at six adjacent stations changed largely near beachline;there was about twice difference in the value of E.C.even though the distance between two stations was only 100m apart.The pattern of E.C.distribution of seepage groundwater was similar to that of seepage flux.3)E.C.of seepage groundwater around entire periphery of the lake was measured.It was found that E.C.was high in the southern lake and in the north region of the northern lake,although in the northern lake,there were rather great local change in the values of E.C.Factors.such as bottom sediments,seepage flux and human activities were infered to exert influence on the local change.
著者
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小林 政雄
大阪教育大学自然研究講座
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小林 正雄
大阪教育大学自然研究専攻
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石田 泰子
大阪市立都島小学校
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小林 正雄
大阪教育大学地学教室
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小林 正雄
大阪教育大学
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石田 泰子
大阪市立東都島小学校
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