ヒメベンケイガニのゾエアの発生
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概要
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1980年8月,静岡県御前崎の岩礁の磯で,ベンケイガニ亜科ヒメベンケイガニNanosesarma gordoniの抱卵個体を採集した.実験室において孵化したゾエアI期からゾエア終期まで,餌料としてアルデミアのノープリウスを充分に与えて飼育した.本種ゾエアは5期を要してメガロパ幼生に変態した.本研究は,これらゾエア各期の付属肢を詳細に記載するとともに,すでに報告された同亜科18種の形態と比較し,相違点を論議した.本種幼生に関しては福田(1978)により予報的に報告されているが,彼の記載した各部位は本報告によく一致した.ヒメベンケイガニの幼生は3・2の小顎II内肢毛式,6本(3対)の尾叉内縁毛数,触角I内肢原基の欠如,小顎II底節下葉毛式2:3(ゾエア低期)などの特徴をもつ.これらはSesarma属, Sesarops属, Metasesarma属などに類似する.これに対して近縁のCyclograpsus属, Chasmagnathus属,Helice属では内肢毛式2・2,尾叉内縁毛数のゾエア高期での増加,蝕角内肢の終期での出現,ゾエア低期での下葉毛式1:3などの特徴を有し,両グルーブ間で相違する.本種を含む前グループにおいて,触角IIがB_2型である本種はSesarma cinereumやS. reticulatumと同型を示すが,残りの種ではB_4型である.さらに本種はゾエア期の数や甲背棘基部における色素胞の欠如によりS. cinereumと異なる.またゾエア期の数および顎脚I原節における色素胞の欠如によってS. reticulatumとも異なる.したがって,本種ゾエアは,以上の各部位の相違により既報の他種ゾエアから識別できる.特に,顎脚I原節毛式2・3・2・2は本種幼生のみがもつ特徴であり,この部位によっても他種幼生と区別することができる.
- 1982-05-25
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