告知に関する死生観の比較研究
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概要
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本研究は、1999年11年12月4日〜30日、日本(福岡市)とドイツ(ハイデルベルク)における法学生と一般社会人を対象に行った告知に関する意識調査を通じて、日本とドイツの死生観の傾向を概観し、末期医療に求められている患者・家族のケアを探求すると共に、医療情報の開示のあり方を模索するものである。結果として、告知を自分に家族に望む者が、日本71.95%、ドイツ92.78%と過半数を占め、いずれの国においても高かった。死生観(タナトロジー)の傾向を明確にするために、告知を望む場合、権利・準備・家族・自己選択・信頼の5要因、また、告知を望まない場合、見ることを望まない・見られること・見られた後・配慮・察するの5要因に着目した。その結果、両国に共通して、特に大学生において、告知を望む理由の要因の多くが、自分の身体について知る権利があるを選択しており、自己の健康状態を知ることについて強い権利意識が窺えた。また、日本人が死を前に片づけるべきことをしておきたいという傾向が強いのに比して、ドイツにおいては、信頼関係に基づいた家族や緊密な信頼関係を重んじる傾向があった。一方、告知を自分にも家族にも、望まない者は、ドイツには該当者がなく、日本も5.48%と少なかった。しかし、告知を自分に望み、家族には望まない者は、若干名おり、日本19.51%、ドイツ6.18%で、家族が真実を知るのが怖いだろうから、家族がショックを受けるのを見たくないから、という理由が両国共通であった。自分に望まない理由には、真実を知るのが怖いを選択する者が多かった。また、社会人は、弱い自分を見られたくない、家族に余計な心配をかけたくないを選んでいた。自己の心理的負担を家族に回避しようとする気持ちが強い。誰れにでも、いつか必ず訪れる死を冷静に受け止め、残された時間を有意義に過ごすためにも、患者や家族が自己やその家族の生と死について、考えること、また、告知を行う医療者側も、患者自身または家族の意向を尊重する必要がある。本稿は、各人が満足した生を送るためにタナトロジーの重要性の自覚とその普及を提唱するものである。
- 日本生命倫理学会の論文
- 2000-09-13
著者
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丸山 マサ美
九州大学医学部保健学科
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松尾 智子
九州大学大学院
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丸山 マサ美
九大 医 保健学科 看護学専攻
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安藤 満代
聖心女子大学大学院
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丸山 マサ美
九州大学医学部保健学科看護学専攻
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安藤 満代
聖心女子大学
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丸山 マサ美
九州大学医学研究院
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