単クローン抗体により検出される絨毛性腫瘍(絨毛癌および胞状奇胎)細胞上のTrophoblastの分化抗原
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概要
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Trophoblastの分化ならびに悪性化に関連する抗原を検出する単クローン抗体(MoAbs)を作製する目的でBALB/cマウスを絨毛癌細胞株(BeWo)で免疫し、K6hlerandMilsteinの方法に準じて細胞融合を試み、2種類のMoAbs(TM7-3、TM3-8)の作製に成功した。これら抗体の検出する抗原分布をCellularradioimmunoassay、間接螢光抗体法および間接酵素抗体法により検討し、以下の結果をえた。(1)各種培養細胞における抗原の発現を検討すると、絨毛癌細胞では10株中9株に認められたが、リンパ芽球様細胞26株にはまったく認められなかった。また、他の悪性腫瘍細胞16株中5株にも認められた。(2)絨毛性腫瘍ならびに正常絨毛組織における抗原分布を間接螢光抗体法および間接酵素抗体法で検討すると、この2種類の抗体は絨毛癌組織(1例)、胞状奇胎組織(2例)ではともにCytotrophoblast様腫瘍細胞に強く反応し、Syncytiotrophoblast様腫瘍細胞とはまったく反応しなかった。一方妊娠初期の正常絨毛組織(7例)においても同様な所見が確認されたが正常cytotrophoblastに認められた反応はCytotrophoblast様腫瘍細胞より明らかに弱かった。(3)他の正常組織における抗原分布を検討すると、絨毛周囲の脱落膜細胞、内膜腺上皮細胞、子宮筋細胞および血管内皮細胞とはまったく反応しなかった。しかし、胎児および成人の膵管上皮細胞と腎尿細管上皮細胞の一部とは交叉反応を示した。他の検索した臓器組織(12種類)との反応はみられなかった。今回作製した2種類のMoAbsは、特異性の検討から同じ抗原を検出している可能性が強い。この抗原は正常絨毛でもCytotrophoblastにのみ発現されており、Syncytiotrophoblastには発現されておらず、Trophoblastの分化抗原の一つと考えられる。また、これらり抗体は絨毛癌および胞状奇胎においてCytotrophoblast様腫瘍細胞に強く反応していることから、この抗原の質的、量的変動がTrophoblastの増殖や悪性化と密接に連動している可能性が推測される。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-04-01
著者
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