婦人科悪性腫瘍と血中Plasminogen activatorsとの関連性の検討
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概要
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Plasminogen activator (PA)は,悪性腫瘍細胞・組織中にて多量に産生される場合があることから, 腫瘍の発生, 浸潤, 転移等に関与するのではないかと推論されている. PAには, tissue type PA (tPA)とurokinase type PA (uPA)の二種が存在し, 近年両者の血中での測定が可能となつてきた. そこでわれわれは, 婦人科悪性腫瘍患者における血中tPA, uPA抗原量, PA活性値を測定し, 血中でのPAと悪性腫瘍の病態との関連性について検討した. 対象は当院入院患者で婦人科腫瘍を有するものであり, 悪性群69例(子宮頚癌50例,卵巣癌19例), 対照として良性群33例(子宮腫瘍8例,卵巣腫瘍25例)の計102例である. いずれも治療前に肘静脈より駆血帯を用いて採血した. 血中tPA, uPA抗原量は, Takada et al. (1986)のEIA法の変法により, PA 活性値は, Verheijen et al. (1982)の比色法により測定した. 子宮・卵巣腫瘍とも血中PA活性値, uPA抗原量は, 腫瘍の悪性度, 進行度にて何ら特徴的変動を示さなかつた. しかしtPA抗原量は, 子宮腫瘍において良性群5.2±2.0ng/ml, 頚部癌0期6.6±2.5ng/ml, I期5.1±2.4ng/ml, II期6.4±2.4ng/ml, III期5.4±2.6ng/ml, IV期10.5±5.1ng/mlとなり, IV期群にのみ良性群との間に有意(p<0.05)な上昇を認め, またこの群は, 0〜III期群との間にも有意差(p<0.001)を示した. 卵巣腫瘍においては, 良性群は4.9±2.4ng/mlで, 卵巣癌I期とは有意差を示さないが, III期で7.4±4.1ng/ml, IV期で16.5±9.8ng/mlとなり, 良性群との間に各々p<0.05, p<0.001の有意差のある高値を示した. 以上子宮頚部癌では, IV期群において, 卵巣癌では, III期・ IV期群においてのみ血中tPA抗原量の上昇が見られ, 婦人科悪性腫瘍の播種, 転移とtPA抗原量との関連性が示唆された. 一方,血中uPA抗原量, PA活性値は腫瘍の悪性度,進行度と何ら関連性を示さなかつた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1989-09-01
著者
-
星野 達二
神戸市立中央市民病院
-
姫野 清子
英ウィメンズクリニック
-
棚田 省三
英ウィメンズクリニック
-
島田 逸人
神戸市立中央市民病院
-
小野 吉行
神戸市立中央市民病院産婦人科
-
池内 正憲
神戸市立中央市民病院産婦人科
-
高島 英世
神戸市立中央市民病院産婦人科
-
道本 知子
神戸市立中央市民病院産婦人科
-
棚田 省三
英ウイメンズクリニック
-
姫野 清子
英ウイメンズクリニック
-
姫野 清子
神戸市立中央市民病院産婦人科
-
棚田 省三
神戸市立中央市民病院産婦人科
-
諏訪 美鳥
神戸市立中央市民病院産婦人科
-
島田 逸人
神戸市立中央市民病院 産婦人科
-
小野 吉行
小野レーディースクリニック
-
高島 英世
兵庫県予防医学協会細胞検査室
-
池内 正憲
神戸市立中央病院産婦人科
-
諏訪 美鳥
神戸市立中央市民病院
-
池内 正憲
神戸市中央市民病院
-
小野 吉行
神戸市立中央市民病院
-
高島 英世
神戸市立中央市民病院
-
姫野 清子
神戸市立中央市民病院
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