膣式子宮全摘に使用する糸の研究
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概要
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現在,腔式子宮全摘で広く便用されている結紮糸,即ち絹糸(6号,7号),デキソソ(1号),及びクロミック腸線(2号,3号)とプレーン腸線(2号,3号)の各々につき先ず力学的検討を行った.即ち抗張力,伸展性,収縮性を糸の乾燥時と湿時について比較した.次に,臨床的にそれらの糸を膣式子宮全摘に使用し,術後の出血率,膣断端肉芽発生率,膣断端創部治癒率を比較した.その結果,(1)乾燥時抗張力はプレーン腸線(特に3号)が最も強く,次がクロミック腸線,次がデキソンで,絹糸は特に弱かった.湿時の抗張力も,ほぼ同様の結果となった.(2)乾燥時伸展性でもプレーン腸線(特に3号)が最も良く,以下クロミック腸線デキソン,絹糸の順となった.湿時では,腸線と絹糸の伸展性は上昇したが,デキソンは不変で特に悪かった.(3)乾燥時の収縮性は,腸線(特にプレーン3号)が良く,次が絹糸で,デキソンは極めて悪かった.湿時ではすべての糸の収縮性が良くなった.(4)非吸収性の絹糸は抗張力が特に弱く,また感染性の異物として長期に残るため膣式子宮全摘での使用は不可と判断した.(5)吸収性の糸では,先ずデキソンは伸縮性が悪いため術後の出血が極めて多く危険であった.次にクロミック腸腺も膣断端の二次的出血が比較的多かったが,プレーン腸腺は,術後出血が極めて少なかった.(6)靱帯断端の結紮にクロミック腸腺を使うと,感染性の異物として比較的長く残るため,吸収性の早いプレーン腸腺に比し,膣断端の肉芽発生が多く,しかも長期に続き,膣断端の創部治癒も遅れた.以上の結果より,最も抗張力が強く伸縮性の良いプレーン腸腺が,膣式子宮全摘には最適な縫合結紮糸であることが判った.
- 1985-01-01
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