産科における中心静脈圧測定の意義に関する研究
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概要
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正常及び循環器疾患合併妊産婦の循環動態の変化を把握するため,産科例116,婦人科例32計148例につき仰臥位で中心静脈圧(CVP)を連続測定し以下の結果を得た. 1) 正常妊娠中のCVPは妊娠初期8.4±5.0cmH_2Oで非妊時に比して差異はないが,妊娠中期より下降しはじめ妊娠10ヵ月では3.9±2.3cmH_2Oと有意に下降した. 2) 正常分娩第I期では陣痛間歇時4.3±2.0cmH_2O,子宮収縮と一致して5〜20cmH_2O上昇するが,発作終了と共に速かに元のレベルへ下降した.第II期では発作時怒責による胸腔内圧の上昇が加わり50cmH_2O以上に達した.児娩出直前4.3±4.8cmH_2O,胎盤娩出直後10.2±4.8cmH_2Oまで上昇し以後徐々に下降して分娩後1時間で3.9±4.5cmH_2Oとなり分娩前のレベルへ戻つた. 3) NYHA機能分類I〜II度の代覚された心疾患合併妊産婦では妊娠中期9.7±2.9cmH_2Oで有意に高値を示した以外正常群に比し差はなかつた. 4) 産科麻酔群では帝王切開時脊椎麻酔により2.2±1.4cmH_2O下降,気管内麻酔により10.2±4.3cmH_2Oの著明な上昇が認められた. 5) 帝王切開時のCVPの経過は正常経腟分娩群と同様で,循環動態の変化は経腟分娩と本質的に変らないことが判明した. 6) デキストラン負荷試験(200ml/10min)によるCVPの上昇は妊娠初期3.6±1.0cmH_2O,妊娠中期以降有意に減少し妊娠10ヵ月では1.3±1.0cmH_2Oであり,妊娠末期の血流量変化に対する耐容性上昇が確認された. 7) 陣痛発作時のCVPは分娩第I期には子宮収縮に,分娩第II期には胸腔内圧に主として影響され,分娩直前より分娩1時間後にかけてのCVPの下降は出血量との間に有意な相関が認められた. 8) 胎盤娩出直後のCVPの上昇は心疾患群7.6±4.8cmH_2O,正常群6.1±2.9cmH_2O,脊椎麻酔帝王切開群5.0±4.1cmH_2O,気管内麻酔帝王切開群3.0±4.2cmH_2Oであつた. 9) 産科臨床上,CVP Monitoringは循環系合併症等のhigh risk pregnancyの管理,輸液時の管理等において有用であり,本研究の成績は中心静脈圧測定の産科における応用の基礎資料となると考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1977-02-01
著者
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