卵巣摘出術後の骨密度とカルシウム代謝の時間的推移

概要

論文の詳細を見る
卵巣摘出術後の骨密度の推移をカルシウム(Ca)代謝の推移とともに観察した. 対象は術前1年間, 整順な生理を有しており, 手術を受ける予定の33例 (術前群), 同様に閉経前子宮切除を受けて, 5年以内の例 (HX) 57例, 及び閉経前子宮, 卵巣摘出術を受けて5年以内の例 (OOX) 101例の計191例である. これらをそれぞれ術前群, HX群, OOX群とし, 全例に対し dual energy X-ray absorptiometry (DXA)法及び Microdensitometry (MD)法による骨密度測定及び, 血清Ca, リン (P), Al-P活性, クレアチニン, オステオカルシン, intact parathyroid hormone (intact-PTH), 25-OH vitamin D(25-D), 1,25(OH)_2 vitamin D (1,25-D) 及び尿ハイドロキシプロリン/Cr比を測定した. これらの測定値を各例の術後期間別に分類し, 術前群を0年とし, 術後期間を経るにつれ, 各測定項目がどのように変化するかを検討した. 手術後OOX群の脊椎骨密度, 及び中手骨皮質骨密度は急速に低下し, その低下速度は脊椎骨で年間10%に及んだ. しかし特に脊椎骨において, その骨密度低下は術後2年以降鎮静化し, 以後の減少を認めなかつた. HX群での有意の低下を示さなかつた. 手術直後より, OOX群の血清Ca, P, Al-P, オステオカルシン及び尿ハイドロキシプロリン/Cr比は上昇した. しかし, 血清Ca, Pの上昇は一過性であつた. このCa, Pの上昇期では, 血清 intact-PTH と 1,25-D値は術前群に比し有意に低下した. しかしこれらのホルモン値はCa, Pの上昇の終了とともに前値に回復せず, かえつてその血中濃度は増加し続けた. 骨形成のパラメータと考えられるAl-P活性及びオステオカルシン値はOOX群で観察期間を通じ上昇したままで推移した. 一方骨吸収のパラメータと考えられる尿ハイドロキシプロリン/Cr比は, 術後2年以上経過すると術前群と同程度まで回復した. HX群においては一過性のP値の低下以外, みるべき変化がなかつた. 以上の結果は, 卵巣摘出術後の骨吸収の亢進とその収束に, カルシウム代謝調節ホルモン系が何らかの役割を果たしている可能性を強く示唆するものであると考えられた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1992-02-01

卵巣摘出術後の骨密度とカルシウム代謝の時間的推移

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク