成熟人胎児血漿遊離アミノ酸値について
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概要
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我々は,人胎児血漿遊離アミノ酸(以下FAAと略)量を知る目的で,妊娠39〜41週,生下時体重2,600〜3,600gの満期産成熟新生児17例について〓静脈血漿FAAを,アミノ酸自動分析器を用いて測定した.測定に際しては,より正確な分析値を得る目的で下記の3点に留意した;1) アミノ酸自動分析時の緩衝液として,従来のクエン酸ナトリウム緩衝液にかえて,特に中酸性アミノ酸群の分離精度にすぐれたクエン酸リチウム緩衝液の使用,2) 定量精度向上のため除蛋白法としてスルホサリチル酸法の採用,3) 採血後に生ずる各種アミノ酸,特にグルタミン,グルタミン酸,アスパラギン,アスパラギン酸,システィンなどの崩壊,或は増加を防ぐために,検体の低温操作および採血後の処理時間の短縮.その結果,従来の自動分析方法では測定困難とされていたアスパラギン,グルタミンをはじめとして,タウリン,ヒドロキシプロリン,アスパラギン酸,スレオニン,セリン,グルタミン酸,プロリン,グリシン,アラニン,シトルリン,α-アミノ-n-酪酸,バリン,システィン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニールアラニン,オルニチン,リジン,ヒスチジン、アルギニン計24種類のFAAを比較的明瞭に分離定量し得,次の如き結論を得た:1) 胎児血漿中もつとも高濃度であるのは,中性アミノ酸のグルタミンで504.4μmoles/Lと胎児血漿全FAA量の約17%を占める,2) 濃度200μmoles/L以上と,胎児血漿にあつて比較的高値を示すFAAには,中性アミノ酸ではグルタミン,スレオニン,グリシン,アラニン,バリンの5種があるが,塩基性アミノ酸ではリジンのみである.なお,これら6種のFAA量の総和は,全FAA量の約60%に相当する,3)酸性アミノ酸であるアスパラギン酸およびグルタミン酸は,3.8μmoles/Lおよび11.2μmoles/Lと,従来報告されていたよりもはるかに低値である.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1977-04-01
著者
-
城戸 国利
京都大学医学部婦人科学教室
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林 進
京都大学医学部婦人科学産科学教室
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山田 順常
京都大学医学部婦人科学産科学教室
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橋本 良子
京都大学医学部婦人科学産科学教室
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眞田 惠子
京都大学医学部栄養治療室
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