人胎生期における肝遊離アミノ酸量の変動
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概要
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本実験の目的は,未検討である人胎児肝遊離アミノ酸量の胎児発育にともなう変動を明らかにすることである.実験対象は,合法的な人工妊娠中絶術によつて得た胎生4ヵ月から8ヵ月にいたる各月5例ずつ,計25例の人胎児新鮮肝である。実験方法はTallan et al (1954)に従い,アミノ酸分析には日立KLA3B型自動分析器を用いた.測定したアミノ酸は非必須アミノ酸のタウリン,アスパラギン酸,セリン,プロリン,グルタミン酸,グリシン,アラニン,オルニチン,チロシン,ヒスチジン,および必須アミノ酸のバリン,ロイシン,イソロイシン、スレオニン,フェニールアラニン、リジン,メチオニンであり,合計17種である. これらアミノ酸のうち,胎生4ヵ月から8ヵ月まで,各月の平均値が2.59〜3.68umoles/g.w.t.w.と,他アミノ酸に比し比較的高値であつたのは,非必須アミノ酸のグルタミン酸およびグリシンであつた.1.62〜3.35umoles/g.w.t.w.以下とついで高値であつたのは,非必須アミノ酸のタウリンおよびアラニンであつた.これら非必須アミノ酸に比し必須アミノ酸は比較的低値で,スレオニン以外はいずれも1.0umoles/g.w.t.w.以下であつた.一方,各アミノ酸量の逐月的変動をみると,スレオニン,プロリン,グリシン,アラニン,バリン、メチオニン,ロイシン,イソロイシン,チロシン,リジン,およびヒスチジンが,胎生4ヵ月から6ヵ月にかけて減少を示した.また,タウリン,スレオニン,グリシン、バリン,イソロイシン,オルニチン,リジンが胎生6ヵ月から7ヵ月,あるいは8ヵ月にかけて増加した.すなわち,人胎児肝遊離アミノ酸の多くが,胎生6ヵ月までは減少し6ヵ月以後は逆に増加に転ずることが判明した.著者はこれら人胎児肝遊離アミノ酸の変動から,人胎児肝の蛋白質アミノ酸代謝は,その成熟過程において胎生6ヵ月頃に大きな変貌をとげるのではないかと推察した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1975-01-01
著者
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