胎児の酸塩基平衡と電解質代謝に関する研究
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概要
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人胎児呼吸循環系の生理の一端を追求すべく, 胎盤循頼完成以降の胎児ならびに母体のガス代謝, 酸塩基平衡および電解質環境を全在胎期間を通じて検索し, 次のような結論を得た. 1. 胎盤循環完成以降, 妊娠末期までの臍静動脈血においてpO_2, pCO_2, pH, Na, K, Ca, Cl, HCO^-_3, HPO^<-->_4, などほとんど変動は認めなかった. 2. この際胎児のpO_2は成人正常値のわずか1/3であったが, pCO_2, PHは成人正常値の生理的動揺範囲内にあった. 3. 人胎児の酸塩基平衡は軽度の metabolic acidosis と respiratory acidosis の共存した状態で成人正常値に近似した状態にあり, 胎生期間中極めて安定した状態にあった. 4. 胎児の Gamblegram では胎生初期ほど全陽イオン濃度と陰イオン濃度の差, すなわち普通測定されない有機酸(X^-)が多く, この際在胎期間が進むにつれ血清蛋白が増加すると, X^-は減少するという関係がみられた. すなわち血清蛋白量の変化が胎児の電解質平衡に変化を与える1つの大きな要因となっていることはほぼ確実であり, 胎生の進むにつれ蛋白系の緩衝作用は強くなっているものと考えられる. 5. 胎児の赤血球数, 血色素量, ヘマトクリット値は在胎期間が進むとともに漸増し, 酸素運搬能を高めていた. 以上胎児は胎盤循環完成以降, 安定した環境にあると言え, これが Feto-maternal circulation において特に酸素の胎児への充分なる補給といった点において一役かつていることは意義深い.
- 1970-04-01
著者
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