HCV抗体陽性妊婦からみたC型肝炎ウイルスの感染経路に関する研究
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概要
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1990年8月より1993年7月の間に焼津市立総合病院で分娩した妊婦2,528例と他施設でHCV抗体陽性と診断され紹介された妊婦1例と褥婦1例, およびC型肝炎ウイルス(HCV)抗体陽性妊婦(32例)の夫26例, 母親21例, 父親11例, 兄弟10例さらに新生児32例とその同胞24例を対象とした. HCV抗体はc100-3抗体を, ELISAキットあるいは第二世代抗体をHCV EIA IIキットにて測定した. HCV抗体は妊娠12週と36週に測定した. 陽性妊婦に対し, 血中HCV RNAを測定し, 肝機能検査を施行した. 児の追跡調査については出生時(臍帯血), 日齢5, その後1歳まで3カ月ごと, 2歳まで6カ月ごと, 2歳以降1年ごとに採血・診察を行い, HCV抗体, HCV RNA, 肝機能検査を施行し, 臍帯血ではIgM,CRPも測定した. 家族について, HCV抗体, HCV RNA, GPT値を測定し, 輸血歴を問診した. 当院で分娩した妊婦のHCV抗体陽性率は, 1.19%(30/2,528)であった. 第一世代HCV抗体の陽性率は1.08%(18/1,659), 第二世代HCV抗体では1.38%(12/869)で両者間に有意差を認めなかった. HCV抗体陽性妊婦のHCVRNA陽性率は56.3%(18/32)であった. 夫のHCV抗体陽性率は, 23.1%(6/26)であり, 抗体陽性者中83.3%(5/6)にHCVRNAを検出した. 同様に妊婦の母親のHCV抗体陽性率とHCVRNA陽性率はそれぞれ19.0%(4/21)と100%(3/3), 父親は, 54.5%(6/11)と83.3%(5/6)であった. 臍帯血のHCVRNA陽性率は6.7%(2/30)であった. HCVRNA陽性の妊婦18例から生まれた29例の児のうち4例(13.8%)にHCVRNAが検出された. (1) 当院の妊婦のHCV抗体陽性率は1.19%で一般人口と有意差を認めず, 陽性妊婦中HCV RNA陽性率は56.3%であったこと, (2) HCV抗体陽性の家族内集積性が認められたこと, (3) HCV抗体陽性妊婦から生まれた児の7.1%(4/56)にHCV RNAが検出されたこと, (4) HCV RNA陽性の妊婦18例から生まれた29例の児のうち4例(13.8%)にHCVRNAが検出され, HCVの母子感染の頻度は5〜15%と推定されたことが示された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1994-07-01
著者
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