妊娠維持における子宮動脈分枝血管壁増殖の重要性に関する研究

概要

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モルモットのmesometrial arteryは,子宮動脈の分枝で直接胎盤へ流入する部分であり, 妊娠に際して増殖し, 血流の面から胎児の成長に多大の貢献をしている. この血管壁の正常性周期, 正常妊娠時および抗progesterone剤 RU38486 30mg/kg投与による流産に際しての増殖性の変化を測定比較し, 血管系の妊娠維持における重要性について検討した. 正常性周期・正常妊娠ならびにRU38486投与による誘発流産時のmesometrial arteryを採取し, ^3H-thymidine 185kBq/mlを含むMedium 199で4時間培養した. 培養後血管組織内に取り込まれた^3H 量をシンチレーション・カウンターにて計測し, 血管壁増殖性の指標とした. 正常性周期のmesometrial arteryはdiestrus期には20±9Bq/mg・h (M±SE, 以下同じ)ときわめて低い増殖性であったが, 排卵期のDay 1に向かって30倍以上の急激な増殖を示し, 以後漸減した. これに対し正常妊娠時には, モルモットの妊娠の1st trimesterにあたる20日未満では2,825±1,036と排卵期を上まわる高値を示したが, 以後523±105 (20≦d<30), 384±36 (30≦d<40)と漸減し, 分娩直前には75±10 (60≦d)という低値となった. これらの各妊娠時期にRU38486 30mg/kgを投与して流産を誘発し, 投与24〜48時間後で胎仔がまだ生存している場合のmesometrial arteryの増殖性を測定したところ, たとえば妊娠20日以上30日未満の場合には255±44と対照に比し有意な低下を見た(p<0.05). RU38486投与によるmesometrial arteryの増殖性の抑制は測定した他の2nd and 3rd trimesterのいずれの時期にも認められ, RU38486の妊娠モルモット子宮動脈分枝血管壁増殖抑制作用が胎仔の死亡前に発症することが確認された. 以上より, 血管系の増殖性の低下が, 血管の変性をもたらし, ひいては胎盤への血流量減少となって流産等が発生することが考えられ, 妊娠維持における血管系の重要性が明確にされた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1989-07-01

妊娠維持における子宮動脈分枝血管壁増殖の重要性に関する研究

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