経膣超音波断層法による卵巣癌検診の有用性と問題点(婦人科がんスクリーニングの有用性と問題点)
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概要
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卵巣癌スクリーニング法の確立は産婦人科において現在最も重要な課題の1つであるが,いまだ解決されていない.演者は平成元年以来経膣超音波断層法による卵巣癌集団検診を実施している.今回過去13年間の検診成績を検討し,その有用性と問題点について述べた.〔方法〕経膣超音波断順法による卵巣癌検診の一次検診を市町村が実施する子宮癌集団検診受診者に行った.経膣プローブの走査は4断面を設定し,全画像を記録した.腫瘤長径が30mm以上あるいは混合性エコーパターンを有するものに腫瘍マーカー検査と画像診断を行った.手術は60mm以上あるいは悪性が疑われる腫瘤に行った.〔成績〕一次検診の受診者は249,379人(うち初回受診者66,179人)で,その所要時間は受診者1人あたり約1分であった.要二次検診者は7,565人(総受診者の3.0%,初回受診者の11.4%)で,手術は415人に行い,境界悪性・悪性腫瘍31人(2人は転移性)を発見した.癌発見率は初回受診者に対しO.047%,総受診者に対し0.013%であった.原発卵巣癌29例は初回受診者から19例,経過観察者から4例,再診者から6例発見されていた.これらのうち23例(79.3%)がI期癌であり,経過観察・再診者から発見された癌にII期以上のものはなかった.腫瘍マーカーは全体では29例中14例(48.3%)が陽性であったが,I期癌では23例中8例(34.8%)のみが陽性であった.誤陰性例が1例にみられた.〔有用性と問題点〕経膣超音波断層法による卵巣癌スクリーニングの特徴は,発見癌の70〜80%がI期癌であり,また誤陰性の割合が少ないことである.これはI期癌の治療成績を考えると極めて意義がある.演者の施設の卵巣癌患者のI期癌の割合が本検診導入後に29.7%から61.2%と変化したが,これを本検診の効果と考えるなら,その有用性は大きい.経膣超音波断層法では腫瘤の測定方法と検査時間および抽出基準が問題であるが,演者の方法は手技的に容易で広く普及できる有用な方法であり,前二者の問題を解決している.しかし,生理的あるいは機能的な卵巣腫大を抽出し問題がないわけではない.抽出基準に種々の条件を加味した方が検診効率は上がるが,極めて単純な演者の基準は一次検診では許容範囲と考える.検診効果についてはその評価は現段階では困難である.しかし本検診で発見された癌症例の直接費用は本検診を受けなかった場合のそれよりも少額であった.〔結論〕経膣超音波法による卵巣癌スクリーニングは早期卵巣癌の発見に有用であり,本検診の普及は卵巣癌の死亡率の低下させ得る可能性があると思われる.検診効果の評価については今後十分な検討が必要である.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 2003-08-01
著者
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