日常の定期的運動の血圧上昇抑制因子の研究 : 強制と自由運動の違いがラットの血圧に及ぼす影響
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概要
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われわれは運動が高血圧の遺伝素因をもつSHRラットの血圧上昇を抑制したことをすでに報告している。しかし,どのような機構によって日常の継続的運動(chronic exercise)が血圧上昇を抑制するのかについてはよく解明されていない。そこで,われわれは運動による降圧機序を研究するために,強制と自由運動がSHRとWKYラットの血圧におよぼす効果を検討した。9週齢オスWKY(体重:200-256g),SHRラット(体重:176-216g)各々30匹を非運動群,強制運動群,自由運動群の3群にわけた。強制運動のラットはトレッドミル上を1日1時間,週5回,11週間走った。運動の強度は最初の1週が16.0m/min.で,週ごとに速度を2.7m/min.ずつ増し,26.8m/min.になったのちはトレーニング終了までこの速度を保つようにした。自由運動を評価するためには水車式運動装置を用いた。トレーニング終了後の各群の平均体重はWKY,SHRラットとも非運動群,自由運動群では差がなかったが,SHRラットの強制運動群は他の2群に比べて少なかった。1日当りの走行距離はWKYラットでは12-14週齢で援高の9.5kmになり,以後急激に減少した。SHRラットでは16週齢で7,8kmと最高になり,その後援かに低下し,19週齢では5.1kmであった。非運動群のWKYとSHRラット心筋のSDH活性は約21.5μmoles/g/min.であり,自由運動群,強制運動群のSDH活性は上昇を示さなかった。非運動群のgastrocnemiusの赤筋部分(RG)のSDH活性はWKYラットでは,4.83±0.68μmoles/9/min.(mean±SEM)であり,SHRでは6.34±0.41μmoles/g/min.であった。自由運動群のRGのSDH活性はWKY,SHRラットとも約1.3倍に増加し,強制運動群のRGのSDH活性はWKYラットで約2倍,SHRラットで約1.4倍に増加した。WKYラットの平均血圧は9週齢で約120mmHgであり,20週齢では約145mmHgと漸増したが3群間に差はみられなかった。SHRラットの平均血圧は9週齢で約155mmHgであったが,15週齢では非運動群で206±7mmHg,強制運動群で216±6mmHgに達したが自由運動群では187±4mmHg(P<0.05)と低かった。20週齢では非運動群,強制運動群の平均血圧は約210mmHgであり,自由運動群はそれらに比べて約5%低かった。SHRラットの副腎中のnorepinephrineの濃度はWKYラットよりも約23%(P<0.01)高かった。WKYとSHRラットの区別なく強制運動群の副腎中のNE濃度は約10%非運動群と自由運動群より高い傾向を示した。以上の結果は,必ずしも持久性トレーニング効果を向上させることがSHRラットの血圧上昇を抑制するように作用しないこと,また自由運動と電気刺激でトレッドミル走の動機づけをした強制運動の違いによるストレスの差はラットの血圧調節に交感神経要因が関連していることを示唆している。
- 1981-08-01
著者
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橋本 勲
国立栄養研究所健康増進部運動生理研究室
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樋口 満
国立栄養研究所健康増進部運動生理研究室
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山川 喜久江
国立栄養研究所健康増進部運動生理研究室
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鈴木 慎次郎
国立栄養研究所健康増進部運動生理研究室
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山川 喜久江
国立栄養研究所健康増進部
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鈴木 慎次郎
国立栄養研究所
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橋本 勲
大妻女大・家政
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橋本 勲
国立栄養研・運動生理
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樋口 満
国立栄養研究所
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