教育機会の拡大と定時制高校の変容
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概要
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本稿では, 高校教育の普遍化の中で量的縮小を続けてきた定時制高校の社会的変容を, 三つの視点から実証的に明らかにした。(1) 定時制高校ヘ吸収される生徒層の変容を, 出身階層と学力の2側面がら検討した結果, 高校教育が大衆化した今日でも, 定時制高校は低所得者層, 出身階層の中・底辺層に教育機会を拡大する役割を果たしている。しかし定時制志願者の減少に伴って, 生徒の学力水準の低下は著しく, 勤労青少年のための教育機関という独自の位置づけをもっていた定時制は, 全日制の亜流としての役割を増大させてきた。(2) こうした生徒層の変化は, 定時制高校の人材配分の機能にも大きなインパクトを与えてきた。定時制卒業後の職業達成(初職)を, SSM調査の高校卒, 中学卒と比較した結果, 時系列的にみて定時制卒業生のブルーカラー化は, 維持期の昭和30年代から急速に進行し, 定時制高校の人材配分機能は大きく変容してきた。(3) 初職における定時制卒と高校卒の職業機会格差は, ほぼ同じパターンで現職における格差となって生じている。つまり定時制高校の人材配分機能の変容とともに, 定時制卒業生の職業達成は低下してきた。(4) 以上の結果を, 世代間社会移動の観点からブードン指数を用いて分析した。その結果, 社会の産業化の進行に伴い, 移動における開放性は, 全体として高まってきたにもかかわらず, 定時制卒業生の世代間移動の開放性は逆に低下してきた。定時制高校は, 個人の社会移動に関し, 出身階層からの制約を解消するよりも, むしろ固定化する機能を強めることによって, 教育機会の不平等化の方向に展開しつつあるといえる。
- 日本教育社会学会の論文
- 1983-10-20
著者
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