雑種小麦育成に関する基礎研究 : VI実用パンコムギ品種の雄性不稔系統の育成
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概要
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連続戻し交雑法により日本および米国の33実用品種にTriticum timopheevi細胞質を導入した。ジュンレイコムギ,農林50号,同52号,同69号以外のすべての品種はこの細胞質によって完全ないしほぼ完全な雄性不稔(自殖種子稔性5%以下)に転化した。ユ969年から1975年にかけての京都での観察,および1971年における農事試験場(鴻巣),九州(筑後)・中国(福山)・東北(盛岡)3国立農業試験場,北海道道立農業試験場(北見)での観察の結果,これらの雄性不稔形質の発現は著しく安定したものであることがわかった。上記のジュンレイコムギなど4品種は多くの年次において5%以上の自殖種子稔性を示したことから,弱い稔性回復遺伝子を有しているものと考えられる。ジュンレイコムギ,農林50号,同52号の稔性回復遺伝子はいずれも新中長に由来するものと考えられるが,農林69号の遺伝子は別起原と思われる。雄性不稔系統の放任受粉による着粒率には品種間差異があり,アオバコムギ,Bledsoe,Lemhi 53の3品種は高他殖能,コケシコムギ,フジミコムギ,ミクニコムギ・Idaed 59,Karnvor, White Federationの6品種は低他殖能と考えられる。同一品種の正常系統と雄性不稔系統を隣接して栽植した場合には,低他殖能品種の雄性不稔系統でも50%以上の着粒率を示したので,雄性不稔系統・稔性回復系統を用いたF_1種子の大量採取が日本においても容易であることが証明された。
- 日本育種学会の論文
- 1976-03-01
著者
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