イタリアンライグラスにおける変異と選抜に関する研究 : III.高乾物重方向への選抜に対する反応
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概要
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イタリアンライグラスの3品種(ワセユタカ,鳥取在来,Magnolia ryegrass)について,個体植条件で高乾物重方向へ3世代の選抜を行ない,選抜に対する反応と集団内変異への影響を調査した。またワセユタカから近交度の異なる集団をつくり,乾物重における近交弱勢および合成集団におけるヘテローシスを調べた。これらの結果から,イタリアンライグラスにおける集団内変異とその育種的意義について検討し,次のような結果をえた。 1)集団間の遺伝変異係数,集団内変異係数は,ともに生草重と乾物重で最も高く,乾物率で最も低かった。草丈の変異係数は11月,12月に高かった。集団内変異は,乾物重では選抜によって減少する傾向があったが,他の形質では必ずしも減少しなかった。 2)乾物重は3集団ともに選抜により増加し,第3世代でも選抜効果が停滞する傾向はみられなかった。実現された遺侯力はワセユタカで最も高く,Magnolia ryegrassで最も低かった。 3)選抜対象とならなかった形質の世代による推移を調べると,草丈・茎数・生草重が増加し,出穂日は早くなった。乾物重との遺伝相関は草丈と生草重は正,出穂日とは負で高く,乾物重の選抜効果は初期生育(主として草丈)と生草重の向上,出穂の早生化をともなっていた。 4)乾物重は集団の近交度の増加によって減少し,近交係数0.1の増加により約11%の近交弱勢を示した。また近交により集団内変異が増大した。合成集団は乾物重でヘテローシスを示し,集団内変異が減少した。 5)条播における収量調査では,選抜集団と合成集団は第1回刈取(1月)では原品種より高い収量を示したが,第2回刈取(4月)ではその差は小さくなり,第3回刈取(5月)では原集団と有意差がなかった。 6)これらの結果を他の作物における選抜実験の報告と比較して,他殖性集団における変異と集団の改良,近交弱勢とヘテローシスについて検討を加え,イタリアンライグラスの集団内変異について考察を行たった。また,日本の品種に集団内選抜を加えることによって秋から早春の牧草生産をさらに高める可能性について,条播の結果をも含めて論議を行なった。
- 日本育種学会の論文
- 1975-12-31
著者
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