自殖性作物の量的形質に関する突然変異育種2世代目における栽植個体数推定のための理論的基礎 : II.式の補正および数値計算
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概要
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前報で述べた、X_<2->個体数推定のための理論式を補正し、式を構成する各項の数値計算を行なった。その結果、一般的知見としては次のようなものが得られた。(1)関与する種々の母数の中で、X_<2->個体数に特に強く影響するものは、突然変異率(因子allele当りの突然変異率mで表わす)および育種素材の因子座構成(処理前に劣悪である因子座の数L_1、優良な因子座の数L_2、および前者のうちで改良すべきものの数jで表わす)である、但し、L_2の影響は、二、三百以内であれば、多くの場合無視しても大過ないようである(2)選抜強度とか、変異体の対照区に対する優良度とかのように、量的形質の場合にのみ現われる母数の影響は比較的小さく、これらの母数の変化に起因するX_<2->個体数の変動は、同一因子座構成をもつ質的形質の場合に必要な個体数のたかだか3倍であると考えられる。(3)本報で得た補正式から判断すると、X_<2->個体数がほぼ(L_1__j)(m/2)^jに反比例するとの前報での結論は、一般的には受け入れられないもののようである。(4)mは大きい程望ましいというわけではなく、育種素材の因子座構成によって決まるところのいわゆる最適突然変異率m_0の存在すること、さらに、量的形質の育種の場合にはm_0は決して大きくはないことが示唆された。このことは、仮に実用的価値のない染色体または細胞質の諸変異の誘発を何らかの方法によって抑えることが出来たとしても、因子突然変異のスペクトルを制御できない限りは、高線量または高濃度処理は必らずしも有益ではないことを示す。染色体または細胞質変異体が増加するということの他に、因子当りの突然変異率が高過ぎるということも、高線量または高濃度処理による遺伝分散の増加が優良変異体の生起によるものではなく、大部分、劣悪変異体の増加によるものであるという現象の一因として考えられる。理論式の現時点での実用性ならびに実際場面での用い方などについて簡単に考察した。
- 日本育種学会の論文
- 1971-06-30
著者
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