自殖性作物の育種選抜方策に関する研究 : V. 育種コストを一定にしたときの選抜前相互交配の効率評価
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概要
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F_2以後何回かの相互交配を行なって得た集団に対して選抜を行たう場合と,同一育種コストをF_2世代にまとめて供して選抜を行なう場合の優良遺伝子型の選抜確率を比較することによって,実際育種における相互交配の効率を再検討した。本報では,従来の研究では未検討の,ドミナンスおよび2,3典型的エピスタシスが関与する場合の相互交配の効率についても検討を行なった。選抜前の相互交配は,育種的に望ましくない強い連鎖を破るという立場からは極めて有利に働き得る。このときの相互交配の効率は,関与遺伝間に重複的エピスタシスが存在する場合に最も大きく,他の遺伝子効果すなわち相加的,ドミナンスおよび補足的エピスタシス間にはほとんど差がない。また,遺伝率が小さい形質の場合の方が相互交配の効果が大きい。しかし,上記育種的に不良な連鎖と同一あるいは異なる連鎖ブロックに,優良遺伝子同土の連鎖が混在あるいは併存する場合は,後者に対して相互交配が不利に作用するため,関与全遺伝子座で評価したときの相互交配の効率は大幅に減少する。一般に交配育種法によって実用品種を育成しようとする場合,少なくとも片親に改良の進んだ適応品種を用いるが,このような場合は,親と同じ遺伝子型のままで保持すべき優良遺伝子組合せが多く関与するため,相互交配は効率的でなたい。 一方,品種として直接利用はできないが,有用た形質組合せをもつ交配母本を作出する立場からは,相互交配が有利な場面が多いと推察される。この場合,初めの交配から4,5世代以内に選抜を行たう場合は完全相互交配よりもむしろ部分的相互交配の方が望ましい。完全相互交配集団では有用遺伝変異が保有されていてもヘテロ性が高いため必らずしも表現型変異として発現したい。このような遺伝変異をできるだけ顕在化して利用する立場からは,選抜に先立って1,2回の自殖を行たうことが有益と考えられる。
- 日本育種学会の論文
- 1983-12-01
著者
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