北陸地域におけるオオムギ雲形病菌の病原性分化と抵抗性遺伝資源
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概要
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雲形病は世界各地に発生するオオムギの主要病害であり,わが国でも日本海沿岸地域でその被害が顕著である。本病に対しては,抵抗性品種の育成が最も効果的である。我々は,すでに1315品種の中から新潟の病原菌に抵抗性を示す17品種を選抜した(Fukuyama and Takeda 1992)。これら抵抗性遺伝資源を育種に利用する場合,雲形病菌の病原性の変異程度を明らかにすることが前提となる。本報告では,北陸地域から多数の菌株を分離し,判別品種に対する幼苗接種試験の結果から,それらの病原性分化と17抵抗性品種の有効性を検討した。1992,93,95年の3カ年で得られた合計38菌株を14判別品種に接種したところ,きわめて多様な病原性分化が認められた(Tab1e 3)。すなわち,38菌株は36の型に分別され,同一地区で採取した菌株間でも判別品種への反応が異なっていた。抵抗性反応についてクラスター分析を行ったところ,南部(福井,石川,富山)の菌株は北部(山形,新潟)のものより寄生範囲の広いことが伺われた(Fig.2)。この結果から,本菌の病原性は遺伝子対遺伝子説に基づく特異的遺伝子の他に,複数遺伝子が相加的あるいは相補的に作用する可能性も示唆された。抵抗性遺伝資源については,14判別品種の内,Brier,Turk,0sirisがいずれの菌株にも高度抵抗性を示したが,既知の抵抗性遺伝子では説明できず,北陸菌株に対する未知の遺伝子の存在が示唆された。一方,17抵抗性品種に32菌株を接種したところ(Table 4),Turkey 22(0UT008),Turkey 208(OUT070),Carre 26(OUB024)の3品種がいずれに対しても高度抵抗性を有し,遺伝資源として有望と考えられた。しかし,Turkey 91(OUT031),Ethiopia 402(0UE134)およびAddis Ababa 4(0UE233)は17以上の菌株に罹病性を示し,北陸地域ではほとんど無効であることが明らかとなった。最近,「ミノリムギ」のみが栽培されている北陸地域になぜ多様な病原性が分化しているのかを解明すること,また多数の菌株に抵抗性を有する品種の遺伝子を明らかにすることが,今後の抵抗性育種に重要であると考えられた。
- 日本育種学会の論文
- 1998-03-01
著者
-
中村 晴彦
新潟大学農学部
-
福山 利範
新潟大学農学部
-
福山 利範
新潟大農
-
山路 聖哉
新潟大学農学部
-
Nakamura H
Cryobiosystem Research Center Faculty Of Agriculture Iwate University
-
Nakamura Hisako
Cryobiosystem Research Center Faculty Of Agriculture Iwate University
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