ミャンマーにおけるイネ白菜枯病抵抗性品種群のアイソザイム分析
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概要
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小川ら(1991)は,イネ白菜枯病抵抗性群としてJava14群(Xa-3),TKM6群(Xa-4),DZ192群(Xa-5),Cas209群(Xa-10)の4主要群を定めた。これら品種群の分化は,アイソザイム分類(Glaszmam1987a)による生態型分化と密接に関連する。ミャンマーは,Cas209群とTKM6群が高頻度で分布し,アジアにおける両群の分布が交差する地域のひとつである。本研究では,ミャンマーのイネ白菜枯病抵抗性品種群の特徴を詳細に検討する目的で,アイソザイム分析を行った。その結果,Cas209群,TKM6群,Xa-4とXa-10を合わせもつMond Ba群は全てIsotypeI型であることが確認された。Java14群はIsotypeV型に分類され,Cas209群,TKM6群とは明らかに異なった。DZ192群はIsotypeI型と中間型に分類され,アジア全体に多いIsotypeII型は認められなかった。中間型の遺伝子頻度がIsoty-peII型の特徴を持ち,DZ192群の品種は全て非感光性である点がCas209群とTKM6群のIsotypeIと異なることから,DZ192群のIsotypeIはCas209群やTKM6群のIsotypeIと起源が異なると考えられた。IsotypeIを構成する遺伝子頻度および組み合わせ(アルゴリズム)を分析した結果,ミャンマーにおける分布頻度が高いCas209,TKM6両群は最も使用頻度の高いアルゴリズムが異なり,TKM6群はアジア全体のIsotypeI型と共通する特徴を持ち,Cas209群はAmp-1^4の頻度がTKM6群とは明らかに異なることが示された。出穂期,粒型,病斑長などがアルゴリズムと関連して有意な差を示す傾向にあることから,アルゴリズムの違いは品種の遺伝的背景の差と関連が深いと考えられた。アジア全体でのCas209群の分布は,Amp-1^4の分布域に一致し,TKM6群はアジア全体のIsotypeIの分布域と一致する。これらの結果から,ミャンマーのCas209群とTKM6群は異なる起源をもつ可能性が高い。
- 日本育種学会の論文
- 1997-03-01
著者
-
小川 紹文
九州農業試験場
-
遠藤 昇
大成建設生工研
-
遠藤 昇
(社)国際環境研究協会
-
小川 紹文
宮崎大学農学部
-
Khush Gurdev
国際イネ研究所
-
Endo Noboru
Biotechnology Research Center Taisei Corporation
-
Khush S.gurdev
国際イネ研究所(irri)
-
Ogawa Tsugufumi
Kyushu National Agriculture Experiment Station
-
Ogawa T
Kyushu Agricultural Experiment Station Kumamoto Jpn
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