イネ白葉枯病菌フィリピンレースおよび日本レースを用いた接種試験に基づくTN1(Xa14)品種群のアジアにおける地理的傾斜
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概要
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Xanthomonas oryzae pv. oryzaeの感染により起こるイネ白葉枯病(BB)に対しては,数多くの抵抗性遺伝子が同定されている.Ogawa et al(1991)は,国際イネ研究所に保存される23, 591の在来品種についてフィリピン菌レース1〜4を用いた接種検定を行い,主要な4遺伝子:Xa3(Java14品種群), Xa4(TKM6品種群),xa5(DZ192品種群),心切(Cas209品種群)がアジア全体に分布することを見出した.また,これらの品種群は,異なるイネ生態型分化と密接に関連し、その分布領域も異にする傾向があることが指摘されている.その後,レース5にのみ抵抗性を示すXa14(TN1品種群)が見出され,第5番目の品種群として広域な分布が確認された.しかし,一部の国については十分な調査を行っていなかったので,フィリピン菌レース1〜4に感受性(S)反応を示したベトナム,ラオス,ミャンマーの品種を日本に導入し,日本菌レースに対する反応を調査した.その結果,Xa14は日本菌レースIA,II,zIIIA,IV,Vに対してRRSSR反応を示し,ベトナム,ラオス,ミャンマーの品種にも分布する事がわかった.次に,他の抵抗性遺伝子を持つ4品種群についても接種検定を行い,Xa14を併せ持つ品種(複合型)を同定した.その結果,Xa14を単独に持つ品種は,マレーシア,ベトナム,中国へと続くインドシナ半島の周辺国に高頻度で存在し,ヒマラヤ東南麗に向かうに従い,Xa4あるいはXa10と複合型を形成する傾向が認められた.Xa14は,インド型(アイソザイムI型)に偏り,ベンガル湾沿いではXa4とXa14の各単独型の頻度が高く,ベトナムではXa10とXa14の頻度が高い傾向が認められた.また,東アジア方面では中国,台湾を境に日本および韓国には分布が確認されなかった.Xa14単独型の分布地域は,Harlan(1975)の指摘する第2次遺伝子センターに相当するものと考えられ,複合型に代表される遺伝子多様性中心地は第1次遺伝子センターあるいはその近傍領域を示すと考えられた.ミャンマーで単独型の出現が増加している事から,第1次遺伝子センターはヒマラヤ東南麗であり,ミャンマーはセンターからややはずれると考えられた.一方,第2次センターはインドシナ半島に沿って同心円を描いていることから,Ca14の伝播は第2次センターの形成と密接な関連があると推察された.
- 2004-09-01
著者
-
遠藤 昇
(社)国際環境研究協会
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小川 紹文
宮崎大学農学部
-
Endo Noboru
Biotechnology Research Center Taisei Corporation
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Ogawa Tsugufumi
Kyushu National Agriculture Experiment Station
-
Ogawa T
Kyushu Agricultural Experiment Station Kumamoto Jpn
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