タバコ属種間雑種(Nicotiana suaveolens×N. tabacum)に現れる致死性を克服するための簡便な方法
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概要
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Nicotiana層内の種間雑種,N. suaveolens×N. tabacum (♂)は成育初期に雑種致死する。雑種致死の克服を目的として,播種後4日目の雑種実生をO-10mg/lのカイネチンまたはBAPを添加した1/2MS培地に移植し,温度条件が28℃,終日照明のインキュベーター内で培養した。培養を開始して数日後に,本組み合わせ雑種致死の特徴である胚軸の褐変が始まり,約1週間後には全体が褐変した。培地にサイトカイニンを添加しなかった処理区では,そのまますべての雑種実生が枯死した(Fig.1A)。ところが,培地にサイトカイニンを添加したものでは,褐変した実生の根および胚軸の基部に緑色の不定芽が現れ,培養を開始してから6週間後には多数のシュートが形成された(Fig. 2)。サイトカイニンとしてカイネチンを添加したものでは2および1Omg/l添加区で,BAPを添加したものでは2mg/l添加区でマルチプルシュートが観察された。カイネチン,BAPともに0.2mg/l添加区で雑種致死の症状を示さない健全なシュートが得られた(Table 1)。このように雑種致死実生からの致死を示さない不定芽の直接的な分化には,培地に植物成長調節物質としてサイトカイニンを単独で添加することが有効であると示唆された。雑種致死実生から再分化したシュートを2mg/lのオーキシンを含む培地に移植し発根を促したところ,ほぼすべての個体が発根した。これらの植物体は,檸種致死の症状をまったく示さず温室で順調に成育しつづけ開花した。開花植物の形態はほぼ両親の中間であり,花色は淡い桃色で両親の中間色だった(Fig 3)。根端の染色体数は40本であり,両親のゲノムの和であった。これらの結果より,本法によって得られた植物体は完全な雑種植物であることが証明された。以上,本交雑組み合わせにおいて従来よりも簡便に雑種致死を克服する方法を確立した。今後,雑種致死がみられる他の交雑組み合わせについて,本法の適用が期待される。
- 日本育種学会の論文
- 1994-09-01
著者
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