台風Flo(1990)の強度予報に対する積雲対流のパラメタリゼーションの影響
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概要
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領域モデルを用いて、二種類の積雲対流のパラメタリゼーションが台風の強度に及ぼすインパクトを調べた。使用した積雲対流のパラメタリゼーションは湿潤対流調節と荒川-シューバートスキームである。事例として台風Flo(T9019)を用いた。台風のコア領域(中心から半径250km以内)で平均した海面気圧は、湿潤対流調節と荒川-シューバートスキームを用いた場合とで予報初期から大きく異なり、前者より後者の方が低くなった。中心気圧についても、前者より後者の方が深まる度合いが大きく、観測により近かった。しかし、両者の中心気圧の違いはコア領域平均海面気圧の違いよりかなり遅れて出現した。コア領域平均海面気圧の違いは、予報初期の対流圏下層における気温時間変化量の違いに起因する。湿潤対流調節を用いた場合、下層での冷却が気温の急降下をもたらし、荒川-シューバートスキームを用いたときよりもコア領域平均海面気圧が高くなった。一方、中心気圧の違いは壁雲の位置の差に起因すると考えられる。パラメタリゼーションに影響された下層温度場によって半径方向の降水分布、すなわち壁雲の位置に差が生じ、この差が後に中心気圧の違いをもたらしたと考えられる。対流圏下層での冷却を抑制するように湿潤対流調節を変更して同様な数値実験を行った。その結果は台風のコア領域での冷却が台風の発達を妨げていることを支持するものであった。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 2000-12-25
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