1991年アジア夏季モンスーン期の降水と水蒸気収支 II : 水蒸気輸送と水蒸気収支
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概要
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本報告では、全球数値予報モデルの24時間予想値を使用して1991年アジア夏季モンスーンにおける降水と水蒸気収支の特徴を調べる。第I部では、アジア夏季モンスーン域の主要の循環系を定義し、その変動との関連において降水分布の時間的変化を調べた。第II部では、それらの循環系の変化に注目して水蒸気輸送と水蒸気収支の特徴を調べる。春季からモンスーン期への主要な変化は、水蒸気シンクを伴う降雨域のインド洋・西太平洋赤道域からアジア大陸亜熱帯域への移動、及び、熱帯・亜熱帯海洋域におけるに水蒸気ソース域の形成によって特徴づけられる。南半球及び低緯度帯からこのモンスーン雨域への大きな水蒸気輸送は主として東西に並んだ三つの時計回りの循環系(CS-3, インド洋 ; CS-4, インドネシア域 ; CS-5, 太平洋亜熱帝域)による。モンスーン雨域を含む大領域(10°S-40°N, 35-140°E)に出入りする水蒸気流束の春季からモンスーン期への変化は、その内部における水蒸気流束・降水量の変化に比して、はるかに小さい。この事実は、領域内変動の重要性を示している。この大領域を細分した各小領域についての水蒸気収支解析の結果も、相隣る水蒸気ソース域とシンク域の形成がモンスーン降雨に重要である事を示した。更に、10×10^6km^2程度の領域の水蒸気収支状態を示すパラメーターとして「流入水蒸気流束比」、「流出水蒸気流束比」、「降水生成比」、などを定義し、各領域の特徴を対比した。西部インド洋・アラビア海に代表される水蒸気ソース域では強い下降流と安定成層が降水による水蒸気消費を抑制し、その結果として域外への大きな水蒸気流束を生じる。その風下に位置する水蒸気シンク域は上昇流と不安定成層が見られ、ソース域から流入する水蒸気の多くが降水として消費され、従って、シンク域からの流出水蒸気流束は相対的に小さい。
- 社団法人日本気象学会の論文
- 1999-02-25
著者
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