1991年夏期の中国の強い降雨に関わる中国及南シナ海上の水蒸気収支

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気象庁全球数値予報モデル(T106)の24時間予報値を使用し、1991年夏季モンスーン季の中国及南シナ海上の水蒸気収支を中国上の強い降雨との関連において解析した。大雨域を含む20-40°N及び110-125°Eの領域-Cへの水蒸気流束の大部分は、20°Nを横切る南風水蒸気流束に依ってもたらされる。この南風水蒸気流束は6月初旬に急激に増加した。5〜7月を通し、領域-C内の水蒸気流東収束、及び降水量と南風水蒸気流束との間には高い相関関係が見られる。上記の20°Nを横切る南風水蒸気流束の上流域にあたる0-20°N及び110-125°Eの領域-S(南シナ海を含む)においては、赤道を横切る水蒸気流束の変動は20°Nを横切る水蒸気流束に比べると非常に小さい。又95-110°Eにおける赤道を横切る水蒸気流束の変動も小さい。一方、領域-Sでの東西方向の水蒸気流束の収束量と20°Nを横切る南風水蒸気流束との間に高い相関関係が見いだされる。この領域-Sにおける東西方向の水蒸気流束の収束は、モンスーン西風風系と太平洋高気圧南側の東風風系との合流収束域であるモンスーン・トラフ域で生じている。即ち領域-Sに於ける東西方向の水蒸気流束の収束量と領域-C内の降水量は強い相関関係を持って変動する。領域-Sは水蒸気ソース域ではないけれども、上述の東西方向の水蒸気流束の収束を通して0-20°N域から北向きに水蒸気を輸送し、中国30°N帯の降水および20-40°Nの東向き水蒸気輸送に強い影響を及ぼす。モンスーン西風の吹き出し、太平洋高気圧の東西変位などの季節内変化は、モンスーン・トラフの変化を通じて中国上の降水に影響を及ぼす。7月初旬の10日平均場では、揚子江流域で著しい降雨帯が見られた。降雨帯は、上昇域と一致し、その南北両側に下降域が現れていた。降雨帯の南で降雨帯に対して法線方向の水蒸気流束の収束が見られ、降雨帯中心の風下で大きな切線方向の水蒸気輸送が見られた。降雨帯では、成層の不安定性は最大ではなく、引き続く積雲対流による不安定の解消が示唆される。
社団法人日本気象学会の論文
1999-06-25

1991年夏期の中国の強い降雨に関わる中国及南シナ海上の水蒸気収支

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