新技術の毒性学への応用 : 造血幹細胞動態解析法-BUUV法
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
造血毒性を正しく理解するためには造血幹細胞の動態を把握しなければならない。抹梢レベルの細胞の増減態様は決して幹細胞レベルの変化を反映していない事が少なくないからである。本稿で紹介するプロモデオキシユリジン-UVcytocide法(BUUV)法は, in vivoレベルで造血幹細胞動態を把握できる新しい方法であって, おそらく将来造血幹細胞動態解析に必須となり, 併せて毒性学においても大きな貢献を果すことが期待される方法である。組織切片上で標識率を計測できる腸管上皮や肝細胞と異なり, 造血幹細胞はコロニー形成能をもってはじめて認識できるものであり, このためDNA合成期(S期)にある幹細胞を除去することが, 細胞動態解析には必須となる。即ち本BUUV法では, 浸透圧ミニポンプを用いたプロモデオキシユリジン(BrdU)の持続標識と, このBrdUを取り込んだ細胞のみを特異的に死滅させる近紫外線(UVA)照射を組み合わせ, 非UVA照射群に対する照射群のコロニー数の減少率をもって, S期分画を計測する。ここで得ることが出来ると考えられるパラメーターは, (1)単位時間当たりのS期分画の大きさ, (2)世代倍加時間, (3)定常状態における細胞周期内分画の大きさ, ないしは細胞回転に入っていないdormantな分画の大きさ, など多岐にわたる。本稿では, このBUUV法を用いた正常造血幹・前駆細胞(脾コロニー形成ユニット:CFU-S, in vitroコロニー形成細胞:CFU-GM)の解析結果とともに, 幹細胞動態を修飾する様々な状態下における動態の変化の実例を紹介する。
- 日本毒性学会の論文
- 1998-05-09
著者
関連論文
- Distribution, Accumulation and Excretion of N, N'-Dimonomethylphenyl-p-phenylenediamine in the 2 Year Feeding Test in Rats
- 薬物乱用と「合法ドラッグ」
- DINPの毒性評価と耐容1日摂取量の算定
- 総合化学物質安全性研究費:安全性試験法開発等研究費による研究報告(平成7〜9年度)
- Wistar ラットによるギムネマ・シルベスタ葉抽出物の52週間混餌投与毒性試験
- 表面プラズモン共鳴センサーを用いる内分泌撹乱化学物質スクリーニング法(生体関連機能と分析化学)
- 内分泌障害性化学物質 : その概念と問題点
- F344 ラットによるペカンナッツ色素の90日間反復混餌投与毒性試験
- 食品安全性生物試験関連のトピックス
- P-1A-29 アンフェタミン乱用に対するGamma-Vinyl GABA抑制効果の心理・行動学的評価(日本動物心理学会第61回大会発表要旨)
- 新しい視点から見たトキシコロジー : 発生・成長・老化
- F344ラットによるクーロー色素の90日間反復混餌投与毒性試験
- F344ラットによるフクロノリ抽出物の90日間反復混餌投与毒性試験
- 老化と生体異物応答
- トキシコジノミクス--リバース・トキシコロジーの誕生とトキシコロジーにおける新しいパラダイムの展開
- ホルモン様化学物質とその内分泌撹乱性生体作用の背景
- 内分泌撹乱とホルモン様化学物質 : 第10回公開シンポジウム : 内分泌撹乱物質の作用機序と後世代影響 : 環境変異原研究との接点
- 内分泌撹乱化学物質 : この物質がもたらす問題の本質は何か
- 「環境ホルモン」 : 内分泌撹乱化学物質による障害機構の考え方
- p53欠失マウスにおけるMNUを用いた閾値のない白血病原性DNA損傷
- 内分泌撹乱化学物質(続報) : 作用の特徴と試験法
- 新技術の毒性学への応用 : 造血幹細胞動態解析法-BUUV法
- 老化と心身機能(1)老化のメカニズム
- 造血幹細胞の heterogeneity について
- 老化機構と造血幹細胞の老化
- 老化機構造と血幹細胞の老化
- サイトカインとその応用
- 化学発癌剤誘発マウス肺腫瘍の単クローン性増殖
- 遺伝子置換によるbHLH転写因子MesP1, MesP2の機能解析
- ダイオキシン類のリスクアセスメント,特に国内外の規制状況及び内分泌障害性物質としての作用
- 平成10年度食品化学講習会--内分泌かく乱化学物質問題に関する現状および今後の課題
- 自動分析装置を用いた血清生化学検査での酵素活性計算法の変更について--Kファクタ-とヒト標準血清を用いた測定(計算)法の比較
- 平成9年度食品化学講習会--エンドクリン問題の現状と今後の動向
- 内分泌攪乱化学物質の生体影響 (特集 内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン))
- 内分泌攪乱物質の作用機序からみたヒトへの健康障害 (集中講座 内分泌攪乱物質最前線--ヒト健康影響はどこまで明らかになったか)
- 有害重金属の生体内挙動に関する研究 : カドミウム・ニッケル・鉛
- 放射線に対する生体の"確率的"応答 : 遺伝子発現の網羅的解析
- 新技術の毒性学への応用 : 造血幹細胞動態解析法-BUUV法
- 内分泌撹乱化学物質(続報) : 作用の特徴と試験法