根圏における微量元素肥料の挙動に関する植物間・品種間差異
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概要
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本研究はYOUSSEFらの開発したRhizoboxを用いて供試土壌に微量元素を添加して3栽培種のオオムギと2栽培種のダイズの根圏において各元素がどのような挙動を示すかについて比較検討したもので,次の結果を得た.1)土壌pHはオオムギとダイズのいずれの栽培種とも根に近くなるほど低下し,根の影響する範囲は,オオムギは根から4〜5 mm まで,ダイズは根から3〜4 mm までであった.また R. C. の土壌 pH は根の影響の及ばない土壌に比べて1.8〜2.1ほど低下した.2)オオムギとダイズの根圏における全亜鉛,銅,マンガン,マグネシウム,鉄の分布は各コンパートメント間で大きな変化がなく,全カルシウムは根の近くでやや増加し,影響の範囲は 1 mm まであった.3)根圏における可溶性カチオンの分布はそれぞれ異なった様子を示した.可溶性マンガン,鉄,カルシウム,マグネシウムおよび水溶性ナトリウムはいずれの植物種栽培種でも根に近いほど高くなり,根の影響の及ぶ範囲は根から3〜4 mm まで認められた.根圏土壌の可溶性鉄とマンガン濃度はダイズにおいては Hawkeye 栽培種が鉄欠乏感受性の Bride B 216 栽培種よりずっと高かった.Bride B 216 栽培種が鉄欠乏感受性であるのは根圏の鉄溶解能の低いことと関係していると予測された.可溶性亜鉛と可溶性銅は根近傍でわずかに増加し,根の影響の範囲は可溶性銅が根から 1 mm, 可溶性亜鉛が 1〜2 mm までであった.4)オオムギとダイズの根圏における水溶性アンモニウム,カリウムの分布は根からの距離によって大きく変化した.その分布はいずれの植物種栽培種とも可溶性カルシウム,マグネシウムなどの分布とは異なり,根に近くなるほど減少した.オオムギの根近傍における水溶性カリウムとアンモニウムの濃度はダイズの根近傍における濃度より著しく低く,オオムギの根の影響の範囲は根から水溶性カリウムで 5〜6 mm まで,水溶性アンモニウムで 2 mm までであるのに対して,ダイズの場合はいずれのイオンでも 1 mm にしか達していなかった.このことはオオムギとダイズによって養分吸収速度に違いがあるためと考えられた.
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1993-02-05
著者
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