根圏における徴量元素肥料の挙動に及ぼす微量元素肥料の形態と組成の影響
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概要
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本研究はYOUSSEFらの開発したRhizoboxを用いて,供試土壌に形態と組成の異なる微量元素を添加し,根圏における各種元素の挙動を比較検討し次の結果を得た.1)pHはいずれの試験区とも根に近くなるほど低下し,根の影響の範囲は根から2〜3mmまでであった.またR. C.土壌のpHはその周辺土壌に比べて1.1〜2.1ほど低下した.2)根圏における全亜鉛,銅,マンガン,マグネシウム,鉄の分布は各コンパートメント間で大きな変化がなく,R. C.でわずかな減少がみられたにすぎなかった.全カルシウムはR. C.でやや増加の傾向がみられたが,根の影響範囲は1mmであった.3)根圏における可溶性銅,鉄,マンガンの濃度はいずれの試験区でも根の近くで高くなった.これは根からの直接的な作用,たとえば根からの分泌物,微生物活性の変化,pHの低下などの影響と考えられる.本実験から水溶性の亜鉛とマンガンの同時添加は銅,鉄,マンガンの溶解に対して促進作用があることが示唆された.これらの根の影響範囲は根から2mmまでであった.根圏土壌における可溶性亜鉛濃度はク溶性亜鉛より水溶性亜鉛の添加により著しく増大し,また水溶性のマンガンの添加は土壌の可溶性亜鉛濃度を著しく増大した.これら水溶性元素の添加による根の影響はR. C.の範囲内であった.ク溶性元素の添加ではその濃度は水溶性元素の添加の場合より小さい値を示したが根に近くなるほど著しく増加し,根の影響は根から2mmまでの範囲で認められた.4)根圏土壌における水溶性ナトリウム濃度は近くなるほど著しく高くなった.また可溶性マグネシウムもやや高くなる傾向がみられた.可溶性カルシウムも同じであったが,ク溶性亜鉛の添加では根に近くなると著しく低下する結果が得られた.水溶性カリウムの濃度は根に近くなるとともに低下したが,1〜2の区でR. C.で再び増大する傾向を示した.5)植物体での各元素の濃度は,亜鉛ではいずれの試験区でも地下部で地上部より高濃度であり,R. C.土壌の可溶性亜鉛の濃度が反映されていると思われた.また,亜鉛添加により植物体には多くの亜鉛が集積したが,マンガンとの同時添加はマンガンが地上部への亜鉛の移動を抑制する結果となった.
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1993-04-05
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