水稲の窒素吸収特性の品種間差と施肥法

概要

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1)品種に対応した,早期栽培水稲(稚苗移植)の施肥基準策定の基礎資料を得るために,千葉県の代表的な奨励品種3種を用いて,水稲の窒素吸収特性,地力窒素吸収量,肥料窒素必要量等を平年を中心として解明し,品種別の好適施肥法を明らかにした。2)窒素施用量が同じでも,水稲による窒素吸収経過は品種により異なった。コシヒカリは生育前半の窒素吸収速度が低く,後半に高くなるが,晩生で生育日数が長いため,各生育ステージの窒素吸収量はもっとも多かった。これに対し,ハヤヒカリは生育前半の窒素吸収速度はかなり高いが,早生で生育日数が短いために,各生育ステージの窒素吸収量は少なめであった。中生のトドロキワセは両者の中間の傾向を示した。3)地力窒素吸収量は移植後の積算有効温度示数によって規定され,積算有効温度示数が同じであれば品種間差はみられなかった。したがって,各生育ステージの地力窒素吸収量は,その生育ステージまでの積算有効温度示数の高い晩生(コシヒカリ)が多く,早生(ハヤヒカリ)が少なかった。4)肥料窒素必要量は,生育時期別最適窒素保有量と地力窒素吸収量の差として求められる。幼穂形成期の肥料窒素必要量は1.2〜3.2kg/10 a,成熟期は3.3〜5.2kg/10 aで,いずれの時期もハヤヒカリ>トドロキワセ>コシヒカリの順であった。5)施肥窒素の差し引き法による利用率は,基肥窒素40〜50%,穂肥窒素60〜70%であった。6)以上の結果より,千葉県の早期栽培(中粒質土壌・湿田)で,収量レベル560〜600kg/10 aの場合の平年における好適な窒素施用法を明らかにした。好適な施肥配分(kg/10 a)は基肥+穂肥の体系で,コシヒカリ2.5〜3kg+3kg,トドロキワセ5〜6kg+3〜4kg,ハヤヒカリ8kg+3kgであった。7)供試3品種の窒素吸収特性と施肥法の特徴をみると,コシヒカリは生育前期の最適窒素保有量が少ないうえに,地力窒素吸収量が多く,基肥窒素の適量はもっとも少ない。これに対し,ハヤヒカリは最適窒素保有量が多い反面,地力窒素吸収量は少ない。このため施肥適量はもっとも多い。トドロキワセは両者の中間的な傾向である。
社団法人日本土壌肥料学会の論文
1986-06-05

水稲の窒素吸収特性の品種間差と施肥法

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