螢光X線マッピング装置を用いたマンガン過剰セイヨウミヤコグサ葉中の無機元素動態の観測
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概要
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マンガン過剰の生理障害発症過程における葉中K、Ca、およびMnの移行動態を、蛍光X線マッピング装置によるモニタリング観測により明らかにしょうとした。セイヨウミヤコズサ(Lotus corniculatus L.)を育苗用土壌、および、この土壌にMn0.1%と0.2%添加したMn過剰土壌で栽培し、発芽後、6~14週間に約1週間ごとにXEMSで観測した。生育調査でマンガン過剰を確認し、また、発芽後62日目と84日目に、葉位別葉身中のK、Ca、Mg、およびMnの濃度を原子吸光法で定量した。おもな結果は以下のとおり。1)3元素の葉中濃度を葉全体としてみた場合の経時変化は対照区のKは生育初期に最も濃度が高く、その後、濃度は低下した。Mn添加区では対照区と逆に生育の進行に伴って濃度が高まった。CaとMnの濃度は対照区では、生育途中で高くなり、その後の変化は少なかった。Mn添加区では生育初期が最も低く、以後最終測定回までしだいに濃度が上昇した。この傾向はMn0.2%区のMnの場合は生育途中でMn集積斑が著しく出た後は、Mn濃度の上昇は生育後期まで続かなかった。以上については、化学分析による葉身中元素濃度の測定結果からほぼ同様の傾向を得た。2)3元素の葉中元素分布様式をXEMSにより観測したところ、Kは葉柄側で高く葉先側で低く、CaとMnの濃度は葉柄側で低く葉の周縁と先端側で高かった。この傾向はMn添加区でより明瞭であった。3)マンガン過剰障害により生ずる異常褐色斑部には、Mnのみが集積し、Kは障害葉全体で若干、Caは褐色部周辺でそれぞれ濃度が高まった。この結果より、マンガン過剰と高線量X線照射のストレスにより生じた異常褐変障害部でのK、CaとMnの移行様式に相違を見出した。4)Mn0.2%区の発芽43日目に、中肋を移行中の一塊のMn集積体が出現し、その9日後には葉の周縁部に多数のネクロシス化したMn集積斑が現われ、同時にMn集積部以外の部分のMn濃度は低下した。5)供試XEMSによる観測中に確認されたMn集積褐色斑が発生するときのセイヨウミヤコグサ葉身中のMn濃度をX線強度として調べたところ、およそ50カウント/2秒以上に相当した。以上の結果から、XEMS法による非破壊生体計測法が植物生理障害の診断、および局所部位でのイオン動態の生理学的理解のために有効な手段となりうることが示唆された。
- 社団法人日本土壌肥料学会の論文
- 1988-10-05
著者
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