積算気温を用いた水稲の幼穂長および冷害危険期の推定 (<研究論文>収量予測・情報処理・環境)
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概要
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低温によって発生する水稲の不稔の防止および被害解析に必要な幼穂の発育段階を気象要素より推定する方法について検討した. 発育段階の指標に幼穂長を用い, あきたこまち, コシヒカリ, 日本晴を供試し, 幼穂形成期からの日平均積算気温に対する幼穂の伸長過程を調査した結果, 伸長過程はロジスティック式でよく表され, 式中のパラメータを比較することにより晩生の品種ほど曲線の立ち上がりが遅い傾向にあることが明らかとなった. つくばで得られたコシヒカリのパラメータを用いて郡山で栽培された同一品種の幼穂長を推定した結果, 年次によっては差が大きくなったが, その原因として20℃以下の低温による幼穂発育の遅延が考えられた. 低温感受性の高い小胞子初期の花粉を持つ危険期穎花は, 幼穂長が全長の約30%に達するころ現れ, 約70%で割合が最大になり, 出穂期に近づくにつれて減少する. この関係は日本の主要な栽培品種に共通していると推察された. 幼穂形成期間中の圃場内における発育段階のばらつきは伸長中期で特に大きくなるが, 各茎の幼穂長の実測値に先に求めた積算気温と幼穂長の関係式および幼穂長と危険期穎花率の関係式を適用することにより, 圃場内における発育段階のばらつきを考慮した冷害危険度の式を得た. この式から求められる冷害危険度に冷却量を乗じた重点化冷却量の積算値は, 冷却量のみを用いるよりも正確に不稔歩合の推定ができることを示した.
- 日本作物学会の論文
- 2001-06-05
著者
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