熱帯稲の生育の季節的変化 : 第1報草丈, 分げつ, 植物体重および葉面積に対する環境条件の影響

概要

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年間を通じて稲の栽培が可能な熱帯において, 栽植季節によつて, 生育がちがうかどうか, 気象要因の変化にどう反応するかを研究した. すなわち, タイ国バンコク近郊のバンケン稲作試験場において, 感光性のない, あるいはごく僅かな品種, RD 1, BKN 17-3, C4-63 および IR 8 を供試し, 1969年5月より1年間, 毎月1日に播種し, 移植栽培によつて生育相をしらべた. N・P_2O_5・K_2Oを各75kg/ha施用した. その結果, 季節によつて, 生育にかなりのちがいが認められ, 気象要因のうち, 温度が大きな影響をもつようにみられた. まず, 12月, 1月頃の低温期には, 苗代, 本田において, 草丈の伸長が顕著に低下することが明らかに認められた. このような場合には, 植物体重の増加や葉面の展開も抑制される. また, 品種の成熟時の草丈とみられる, 出穂期近くの草丈と, その時期までの1ヵ月間の平均気温との間には, 年間を通じて高い正の相関があつた. 一方茎数・穂数に対する温度の影響は, やや不明瞭であつた. しかし, 分けつ盛期から節間伸長期にかけて低温にあうと, 分けつが多く, かつ有効茎歩合が高く, 穂数が多いという特徴がみられた. 試験地点は熱帯低地で, 気温は年間を通じて高い. 実験期間中の日平均気温の月平均値は25.1〜29.8℃であり, その差はわずか5℃にすぎなかつた. このような条件下で, 熱帯稲の生育が温度の影響を強くうけていることは注目される.
日本作物学会の論文
1973-09-30

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