線毛を有する口腔レンサ球菌の付着性状
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概要
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口腔レンサ球菌は, 平滑な歯面に最初に付着する細菌の一つで, 歯垢形成の初期過程で重要な役割を果たしている. 細菌側の付着因子には, 莢膜, 線毛, lipoteichoic acidなどがあり, とくに線毛は, 宿主細胞への付着に関与している. しかし, 菌種, 菌株, および線毛形態と付着性状との関係については不明確な点が多い. 本研究は, 線毛を有する口腔レンサ球菌の付着性状を明らかにするため, 荒垣らが分離同定とtype分けしたS. salivarius 58株とS. oralis 38株を用いて, hydroxyapatite (HA) への付着性状, 上皮細胞への付着, 疎水性, およびin vitroプラーク形成性について検索した. 線毛のtypeは周毛性線毛のtype Aが80株, 局在性線毛のtype Dが10株, type Eが6株であった. 1. HAへの平均付着数は, S. salivariusが9.6×10^5, S. oralisのtype Aが1.7×10^6, type Dが4.9×10^5, type Eが1.0×10^6 cells/diskと, 菌種, typeで異なっていた. また, 菌株間でも差がみられた. 2. HAの唾液処理はΦrstavikらの方法に準じ, ろ過滅菌唾液にて行った. 唾液処理により付着数は, 減少する傾向がみられた. しかし, S. salivariusの21%, S. oralisのtype A, type Dの約10%の菌株では増加していた. 3. HAへの細菌付着数の分布は, S. salivariusで2峰性を示し, S. oralisでも類似の傾向がみられた. 4. HAへの付着数に菌種, type, 菌株レベルでの差異がみられたので, 付着数分布の両端から菌株を選択し, HAへの付着数の多い群, 少ない群の2群とし, 他の付着性状との関係について比較した. 1) 唾液処理により, type Aの付着量の多い群は両菌種とも減少する傾向がみられ, 少ない群のS. salivariusは減少せず, S. oralisでは減少した. Type D, Eでは, 付着数が少ない群ではむしろ増加した. 2) 超薄切片像による菌体表層構造は, S. salivariusでは, 内側から電子密度の低い細胞膜, やや高い細胞壁とruthenium redで短く密な線維状構造物と, 長くて粗な線維状構造物が観察された. 局在性線毛を有するS. oralis, type Dでは局在性の線維状構造がみられた. すべてのtypeにおいて2群間での相違はみられなかった. 3) 上皮細胞への付着は, Leungらの方法で行った. S. salivariusでは, HAへの付着数が多い群に上皮細胞への付着数が少ない傾向がみられた. Type AではS. salivariusがS. oralisより付着数が多い傾向がみられた. 4) 疎水性試験はWestergrenとOlssonの方法に従い, 吸光度の変化を測定した. S. salivariusでは菌株間に大きな差がみられたが, 2群間での相違はみられなかった. 5) In vitroプラーク形成性試験は任の方法で行った. S. salivariusでは, 両群とも形成性であるが, 少ない群のほうがやや強い傾向がみられた. Type Dとtype EのS. oralisでは, すべての菌株に形成性は認められなかった. S. salivariusのなかには, sucroseの有無に関係なく, 付着性の強い株がみられた. 5. 以上の結果から, 初期の付着細菌については菌種レベルよりも菌株レベルで検討する必要があると考えられる.
- 大阪歯科学会の論文
- 1992-08-25
著者
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