脳弓電気刺激による視床侵害受容ニューロン活動への影響について

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脊髄の前側索を上行する疼痛伝導路は, 直接的にあるいは脳幹網様体を経由して間接的に視床の諸核へ投射する.腹側基底核群(後外側腹側核および後内側腹側核)と髄板内核群(外側中心核および束傍核)とが疼痛伝導に関する視床の主要な中継核である.痛みの受容に関しては, 脊髄神経系では後外側腹側核が, また三叉神経系では後内側腹側核が弁別的な感覚を, そして外側中心核と束傍核とが情動的な嫌悪感をそれぞれ媒介すると考えられる.前者は疼痛伝導路外側系に属し, 大脳皮質性感覚野に投射する.また, 後者は疼痛伝導路内側系に属し, 大脳皮質の広い領域に投射する.中枢神経では, 痛みの入力がその伝導路の中継核で修飾されることはよく知られている.すなわち, 中継核の大部分および体性感覚皮質から下行性線維がでており, 上行性線維とともに相互的な連絡路を形成して, 疼痛伝達に影響を与えている.そこで, ウレタン・クロラローズで麻酔したネコを用いて, 大脳辺縁系の一部である海馬からの投射線維を含む脳弓への電気刺激が視床の後内側腹側核および髄板内核群の侵害受容ニューロン活動にどのような影響を及ぼすかを調べて, 視床での情報伝達に対する大脳辺縁系の調節機構について検討を加えたところ, 後内側腹側核侵害受容ニューロンの歯髄刺激に対する反応および延髄尾側部が関与しない三叉神経視床路刺激に対する反応は, 脳弓電気刺激による影響を受けなかった.すなわち, 疼痛伝導路外側系への脳弓刺激による疼痛抑制効果は認められなかった.一方, 髄板内核群侵害受容ニューロンの末梢神経刺激に対する反応および中脳網様体刺激に対する反応は, 脳弓電気刺激によって抑制された.この事実は, 疼痛伝導路内側系において, 脳弓刺激による視床レベルへの疼痛抑制作用があることを示唆している.また, この抑制効果はモルヒネの拮抗薬であるナロキソン投与によっても影響されないので, 脳弓電気刺激による視床レベルへの疼痛抑制には, 脳内オピエートの関与は少ないと考えられる.
1998-03-25

脳弓電気刺激による視床侵害受容ニューロン活動への影響について

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