Interrelation of Differentiation, Proliferation and Apoptosis in Cancer Cells
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概要
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あらかじめプログラムされた細胞死, すなわちアポトーシスは細胞の分化と増殖を巧妙に調節し, 生体の恒常性維持に不可欠であるが, その細胞内情報伝達経路は未だ解明されていない. セラミドはスフィンゴ脂質の基本構造物質であり, 細胞膜の構造物質として機能しているが, 近年, 脂質セカンドメッセンジャーとしての機能を有することが判明し, 細胞内動態が研究されている. 一方, クルクミンは c-jun mRNAレベルを低下させ, 核内転写因子AP-1の活性を抑制することが報告されている. 本研究では, セラミド関連情報伝達系と癌細胞の分化, 増殖およびアポトーシスの相互関係について検討した. 実験方法 ヒト白血病細胞 HL-60を10%ウシ胎児血清添加RPMI 1640培地にて培養を行った. 実験には無血清のRPMI 1640培地を用い, 5%CO_2, 37℃の条件下で一定期間培養を行った. 各種濃度のセラミド(2, 3, 5, 10μM)およびクルクミン(0.5, 1, 2μM)を単独, または両者を同時に添加し, 5%CO_2, 37℃の条件下で培養したのち, HL-60細胞を回収した. 分化への影響は HL-60細胞の代表的な分化マーカーであるニトロブルーテトラゾリウム(NBT)還元反応を用い, 増殖および細胞死への影響はトリパンブルー排出法にて判定した. アポトーシスの判定にはDNAのアガロース電気泳導法によリ DNAの fragmentationの有無にて検討した. またc-jun mRNAの検出にはノーザンブロット法をc-Jun蛋白質の変動にはウェスタンブロット法をそれぞれ用いた. 実験結果 1) HL-60細胞の増殖はセラミドにより抑制され, それは濃度依存性であった. またHL-60細胞の増殖抑制はセラミド誘導によるアポトーシスであった. 2)セラミド添加によりHL-60細胞の核内転写因子c-jun mRNAの合成は早期に上昇することが判明した. クルクミン添加時にはc-Jun蛋白質の合成が抑制された. 3)HL-60細胞のNBT還元反応はセラミド添加によって増加し, その反応はクルクミンを同時に添加しても影響をうけなかった. セラミド誘導によるアポトーシスはクルクミンを同時に添加すると解除された. 以上のことから, 核内転写因子AP-1は分化誘導情報伝達系に比してアポトーシス情報伝達系に深く関与していると考えられ, セラミドは核内転写因子AP-1の活性化を引き起こし HL-60細胞のアポトーシスを誘導することによって, 分化と増殖に関与していることが示唆された.
- 大阪歯科学会の論文
- 1996-06-25
著者
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