ヒト口腔癌ヌードマウス移植系における温熱感受性ならびに温熱耐性に対する・薬剤の効果
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概要
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近年, 温熱療法は頭頸部悪性腫瘍の治療の一つとして確立されており, 臨床報告も増加している. しかし, 一度温熱刺激を受けた細胞は, 次回の温熱刺激に対して抵抗性を示すという「温熱耐性」が, 治療上の障害の一つとなっている. この温熱耐性を阻止し, 抗腫瘍効果を高める目的で, 種々の薬剤を用い薬剤併用温熱療法の研究が行われているが, 口腔癌を用いた in vivoにおける報告は皆無である. そこで, 本研究は KB細胞移植ヌードマウスを用い, 細胞膜の流動性に関与するセファランチン^[○!R](化研生薬, 東京), 正常血管のみに拡張作用を示す塩酸ヒドララジン(アプレゾリン^[○!R], 日本チバガイギー, 兵庫)およびニトログリセリン(ミリスロール_[○!R], 日本化薬, 東京)の温熱増感作用ならびに温熱耐性の阻止効果について検討した. 方法としては, 固形腫瘍として継代している KB細胞をヌードマウス大腿皮下の遠心側に挿入移植し, 腫瘍長径が約8mmになったものを1群5匹として実験に供した. 実験群は加温単独群, 薬剤単独群, およびそれぞれを組み合わせた薬剤併用群とし, それらを比較検討する形で評価を行った. 抗腫瘍効果の検討群として, 加温単独群は5群で, 45℃30分間の先加温ののち各1日, 2日, 3日, 4日の間隔をあけ, 45℃30分間の追加加温を行った. さらに温熱耐性の発現を証明するために, 45℃1時間の1回加温群を用意した. なお, 加温はいずれも恒温槽による局所加温とした. 薬剤単独群は3群で, セファランチン(体重あたり0.06mg/g), アプレゾリン(0.14mg/g), ミリスロール(75μg/g)を腹腔内投与した. 薬剤併用群では, 先加温および追加加温時に, セファランチン(0.03 mg/g)およびアプレゾリン(0.07 mg/g)は加温1時間前に, ミリスロールは加温直前および加温開始10, 20分後の計3回(各12.5μg/g)腹腔内投与した. 薬剤併用群における加温も, 加温単独群と同様の加温スケジュールで行った. また, 温熱耐性阻止効果の検討群として, 加温単独群は45℃30分間1回加温ののち6時間, 12時間, 1日, 2日, 3日, 4日後に, 薬剤単独群はセファランチン(0.03mg/g), アプレゾリン(0.07 mg/g), ミリスロール(37.5μg/g)を投与ののち1時間後に, 薬剤併用群は, 抗腫瘍効果検討群の薬剤併用群と同様の投与スケジュールにて薬剤を投与し, 45℃30分間1回加温ののち1日後に腫瘍を摘出した. これを試料とし, 通法に従ってウェスタンブロッティング法を行い, LSAB法により発色させ, ヒートショックプロテイン(Hsp) 70の消長を検討した. 結果は, 1)1回加温群に対して, 1日, 2日後追加加温群では, 抗腫瘍効果に有意差が認められたが, 3日, 4日後追加加温群においては, 有意差はみとめられなかった. 2)1日後に追加加温を行った場合, セファランチン併用群, アプレゾリン併用群およびミリスロール併用群では, 加温単独群に比しそれぞれ1.4倍,1.8倍および1.6倍の抗腫瘍効果を示した. 3)セファランチン併用群では, 加温単独群に比し, Hsp 70の発現量の低下が認められたが, アプレゾリン併用群およびミリスロール併用群では, Hsp 70の発現量の低下は認められなかった. 以上の結果から, アプレゾリンおよびミリスロールは温熱感受性を高める薬剤であり, セファランチンは温熱感受性を高め, さらに温熱耐性を阻止する薬剤であると考えられた.
- 大阪歯科学会の論文
- 1996-06-25
著者
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