藥用サフランの球茎腐敗病に関する研究 : 第 2 報腐敗病菌に対する Trichoderma 菌の拮抗作用に就いて
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概要
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1. 兵庫県と大阪府下で発生していたTrichoderma菌を採集且つ分離して20菌株を得た。これら菌株は何れも厚膜胞子を形成し, Nos. 1∿9は楕円形又は倒卵形, Nos. 10∿19は球形, No. 20は準球形の分生胞子をそれぞれ形成した。2. 薬用サフランの球茎の腐敗部から分離したScl. gladioli, Sclerotium sp., Botrytis sp.などの病原菌とTrichodermaの20菌株とを夫々玉葱寒天上で対待培養を行つて, 各病原菌に対するTrichoderma各菌株の拮抗作用をみた。3. Scl. gladioliとTrichoderma各菌株との対待培養では, No. 10を除く他の菌株は何れもSclerotinia菌叢内に侵入発育し, その菌糸を殺滅した, Sclerotinia菌糸は死滅すると間もなく溶解消失又は褐変した。この拮抗作用はNos. 1,7,8,19,20が最も強く, Nos. 3,4,5,6,10,11,12も著しく強く, Nos. 2,3,14,15,16,17,18も可なり強く, No. 10はその作用がみられなかつた。4. Sclerotium sp.とTrichoderma各菌株との対待培養では, Trichoderma菌株は何れもSclerotium菌叢内に侵入発育し, No.1は他の菌株に比して発育が劣つた。Trcihoderma菌の侵入をうけたSclerotium菌叢では菌糸が死滅し, 間もなく溶解消失したが, 菌核は消失しなかつた。Trichodermaの拮抗菌作用はNos. 13と19が著しく強く, Nos. 2,4,5,6,7,8,9,10,11,12,14,20も可なり強く, Nos. 1,3,15,16,17,18はそれらの菌株より劣つた。5. Botrytis sp.とTrichoderma各菌株との対待培養では, No. 9を除く他の菌株は何れもBotrytis菌叢内に良く侵入発育し, その菌叢内の菌糸を全く又は大部分を殺滅した。Botrytis菌叢の基中菌糸は死滅すると速かに溶解消失するが, 気中菌糸の消失は困難で, 菌叢上に永く残つた。6. Trichoderma菌の侵入による前記病原菌の菌糸の死滅はTrichoderma菌糸の分泌する抗菌物質によとるもの思われる。その物質はBRIAN等の報告しているViridinとGliotoxinであるかもしれないが, 確定は後日の研究に俟つ。
- 神戸大学の論文
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