ツクネイモの青黴病と褐色腐敗病及びこれらの防除に関する研究
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概要
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1.山の芋(ツクネイモ)は貯蔵の後期にPenicillium菌とFusarium菌によつて良く腐敗する。一般にFusarium菌よりもPenicillium菌による腐敗が多く, 被害も多い。また本田に植附けた種芋は主としてFusarium菌によつて腐り, 欠株となる場合が少くない。時には発芽した株が後に萎凋枯死することもある。2.罹病芋から分離したPenicillium菌を培養し, 形態を調べた結果, 本菌はAsymmetrica, Fasciculata, Sclerotigenaに所属しこれに所属するPenicillium gladioli MACH.とPen. italicum WEHM.の両種と本菌とを比較した結果, 別種であることが判り, 本菌を新種と認め, Penicillium sclerotigenum YAMAMOTO sp. nov.と命名した。3.この青黴菌の発育に対する最適温度は20℃位, 最高温度は30℃位, 最低温度は15℃以下である。接種試験の結果, 山の芋は本菌の有傷接種で良く発病し, 甘藷は少数が僅かに発病し, 他の馬鈴薯と里芋の芋類, 蜜柑の果実, グラジオラスの球茎などは有傷接種で発病しなかつた。4.Fusarium菌による褐色腐敗芋からFusarium菌の数多の系統を分離した。これらを培養基上の特性と胞子の形態的特徴から2種類に分ち, Fusarium solani (MART.) APP. et WR.とFusarium oxysporum SCHL.とに同定した。5.Fusarium solani菌の発育に対する最適温度は25℃位, 最高温度は30℃位, 最低温度は15℃以下である。接種試験の結果, 山の芋は本菌の有傷接種で良く発病したが, 病勢は緩慢であつた。また里芋, 甘藷, 馬鈴薯は全く又は殆んど発病しなかつた。6.Fusarium oxysporum菌は馬鈴薯には有傷接種で発病しなかつた。甘藷と里芋には多少感染したが, 病勢の進行は極めて徐々で病斑は余り拡がらなかつた。山の芋は全部発病したが, 病勢はF. solaniと同じく緩慢であつた。7.これらFusarium菌を有傷接種して発病しなかつた芋類の接種部を検鏡すると, 癒傷木栓層が形成し, 菌絲はこの層の外側で生長が停止していた。それで接種試験の発病率は芋類のこの層の形成難易と密接な関係があつて, 前実験で発病したかつた芋類もこの層の形成が困難な状態では多少発病し得ると考えられる。8.山の芋の癒傷木栓層の形成に対する芋の生活力, 温度, 湿度, 薬剤処理などの影響について実験した結果, 収穫直後の生活力の旺盛な芋は完全に形成したが, 収穫後1ヵ年を経た芋は形成しなかつた。また100%に近い湿度, 25℃の温度, 消石灰の塗抹などはこの層の形成に良い影響を与えた。9.切断した山の芋を25℃の湿室に保ち, 10日後にその断面に青黴菌の胞子液を接種したが, 発芽した菌絲は癒傷木栓層で停止し, 腐敗が生じなかつた。この癒傷木栓層の形成で腐敗病の発生が防止できると思う。
著者
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