コナマダラメイガ実験個体群の密度の平衡状態
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概要
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コナマダラメイガ実験個体群の個体数変動にとって食物の量は大きい役割を持っているが,その補給間隔は平衡状態の個体数調節作用に大きい影響を持っているかもしれない。それで恒温恒湿(30°C,約70%R.H.)の一定環境条件下において,食物補給間隔を10日(A,B),20日(C),40日(D)と違えた4個体群の成虫個体数とその成虫頭幅を長期間にわたつて調べ,それらの変動型と個体数調節機構との関係を検討した。AB個体群では約35日の周期の成虫個体数の大きい変動が見られた。D個体群では周期が40日となって食物の補給間隔と一致した。C個体群では初めは35日の周期を示したが途中から40日に変化した。このような変動の機構は米ぬかを媒介とした卵-幼虫-蛹のあいだの相互作用,特に直接的な作用(生活空間の取り合いと共食い)に基づいていると考えられる。すなわち米ぬかはrequisiteとしてよりも,相互作用の働く場としての意義を持っている。35日の周期は1世代の長さに相当し,変動の1つの山は1つの世代の羽化曲線を示しており,食物補給間隔を更に短くしてもなくならないと考えられる。また食物補給間隔を1世代の長さよりも長くすると個体間の相互作用の過程に変化が見られ食物の欠乏の時期ができるので,食物の補給間隔が個体数変動の周期を支配するようになる。30日ないし50日ごとの個体数変動の山が1つの世代の羽化曲線を示すものと考えて,世代ごとの個体数変動を見ると,D個体群では大きい変動を示すが,ほかの個体群ではほぼ一様な密度の平衡状態を示した。世代間の個体数関係はR曲線(reproduction curve)として表わせるが,AB個体群は飽和型に近いR曲線を持っているのに反し,C個体群は山型の曲線を示す。D個体群はC個体群よりも高い山型の曲線を示す傾向があるが,はっきりした曲線関係ではない。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1961-12-30
著者
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