家庭科教育にかかわる生活能力の発達に関する研究(第2報) : 作業能力(食物栄養学科編)

概要

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作業能力の領域を三つに分類し, それぞれの能力について、学習、遊び、手伝いなど児童の生活とのかかわりから発達の姿を追求し, 更に作業能力に影響する巧ち性そのものについて手腕、指先の動きを器具検査によって調査した結果, 次のことが明らかとなった。1. 道具の扱いなど作業遂行に関する能力は、身の回りの生活経験、関心・興味の違いから手指の器用さ, 食・衣生活の能力の項目において出現の時期や量に明瞭な男女差がみられる。女子の場合それらは遊び, 手伝いや行動記録に表われているが生活的意識の芽生えが早く, 関心・興味も高く低学年からごく自然に繰り返し体験している。男子の場合はそれらに差があり教科等学習によって得られるものが大きい。工具を用いての修理的能力は女子に極端に低いが、男女共にボタンつけ、おかずつくりなど技術的に高度な生産的能力と同様に, これらは5年の家庭科学習を中心に能力形成がみられるものである。2. 手指の巧ち性について各学年共男女間に有意差は認められなかった。学年間発達量については女子では1, 2年。次は3, 4年、男子では5, 6年。次は3、4年の順序に発達量が大きく, それは指先の器用さにおいてそれぞれ有意差が認められた。女子の増加量が低, 中学年に多いのは日常生活における関心・興味などに基づく体験内容の性差, 男子の増加量が高, 中学年に多いのは家庭科などによる手指の運動結果の表われと思えるが, 加えて男子の場合は幅広い生活行動における好奇心や積極性による学習差が影響したもので, 男女におけるこのような時期の相違は発達の特徴を示したものと考えられる。3. 手指の器用さの学年間発達量の男女差に対して, 生活能力の出現率では男女共に6年及び4年において停滞現象がみられる。停滞の理由として6年の場合は進学準備のために勉学中心の生活が日常の生活体験を狭めている結果とみられる。4年の場合については、作業能力各項目の発達傾向として, ほぼ3年くらいまでに漸進的発達をするもの, 家庭科学習などを中心に5年で段階的発達を遂げるものとあり、単なるこれら項目的理出によるものと考えられる。隠れた能力としての巧ち性は男女共通して3, 4年においてもかなりの発達がみられることから, 5年における段階的発達を1年早期に実現する意図は, 6年, 中1年における出現率の下降現象と合わせて考えたとき, 極めて適切妥当と思われる。
中村学園大学の論文
1983-12-24

著者

井上照子
中村学園大学・短期大学

家庭科教育にかかわる生活能力の発達に関する研究(第2報) : 作業能力(食物栄養学科編)

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