1890年代前半における国内紡績業の輸出振興策 : その評価の再検討 (西川俊作教授退任記念号)
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概要
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従来の研究は.1890年不況時における紡績聯合会を中心とした輸出振興策について,不況対策としての輸出ダンピングの共謀とその失敗と評価し,1890年代後半に進展した国内紡績業の輸出産業化の要因として,為替変動,政府の保護政策という企業経営とは直接的には無関係な外部環境の変化に力点をおいている。しかし, 1890年の紡連輸出推進決議は,操短のような短期的調整手段と同列にとらえるべきではなく,国内・中国市場双方においてインド綿糸がシェアを占める高番手綿糸市場への参入を目指した戦略の一部として採択されたものであった。この点で,輸入代替と海外市場進出を同時に視野に入れた戦略であったと評価される。また,輸出製品用として現地市場における商慣習や嗜好をふまえた包装・商標等が継続的に研究されたことも注目に値する。1890年不況は海外市場進出の必要性を国内紡績業全体に認識させ,1890年以降,紡連を中心として行われた各種の輸出振興策は,後に国内紡績業が輸出産業へと発展するための前提条件を整える役割を果たしたのである。
- 慶應義塾大学の論文
- 1998-10-25
著者
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