戦略的外注管理会計
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概要
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本稿では,前2稿「自製か購入かの意思決定の再検討(1)(2)」(園田,1998年4月,6月)に引き続く問題提起として,外注管理会計について戦略的管理会計の観点から考察を行う。本稿ではまず,(1)原価企画へのサプライヤーの参加,(2)ジャスト・イン・タイム・システムの導入,(3)納入単価の引き下げ交渉,(4)無検査制度の導入,の4つの伝統的な外注管理の技法を検討し,これらの技法の導入により発注メーカーは利益を受けるが,サプライヤーにとっては,その負担がむしろ増加する可能性が高いことを指摘する。このような既存の外注管理の手法では,今後は効果的な管理を期待することができないので,本稿ではそれに代えて戦略的外注管理会計という概念を提唱した。戦略的外注管理会計は,戦略的かつ長期的な視点から発注メーカーとサプライヤーの関係をとらえている。したがって,戦略的外注管理会計では,発注メーカーとサプライヤーとの協調的な活動を前提として,両社の利益をともに尊重し,両社を構成要素とする価値連鎖で創造される価値の合計額を最大にすることをその目的としている。戦略的外注管理会計は,Shank=Govindarajan (1993)が提唱する戦略的コストマネジメントを外注管理会計に応用したものであり,(1)価値連鎖分析の利用,(2)サプライヤーの利益の貨幣額による測定,の2点を特徴としている。戦略的外注管理会計の視点からは,発注メーカーの提案する改善案がサプライヤーに利益をもたらさない場合には,発注メーカーがサプライヤーに人為的に利益を分配してサプライヤーの同意を得るという,ダイナミックな戦略の策定が可能になる。なお,サプライヤーに対する利益の分配方法としては,(1)報酬制度と,(2)納入単価決定時に配慮する方法の,2つの方法が考えられる。また,戦略的外注管理会計は戦略的アライアンスに適用することも可能であり,今後の発展性が期待される。
- 慶應義塾大学の論文
- 1998-08-25
著者
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