戦略的管理会計と非財務的尺度
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概要
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本稿では,管理会計における非財務的尺度の利用について,近年管理会計の分野で注目を集めている戦略的管理会計の観点から検討を行う。非財務尺度の利用は,戦略的管理会計の重要な特徴のうちの1つであるが,その定義を曖昧にしたまま用いている文献が多い。したがって,本稿では,非財務的尺度について,戦略との関係からその概念を整理して体系化を行い,あわせて財務的尺度との関係を明らかにする。Fisher (1992)は,重要成功要因を媒介として,戦略と非財務的尺度を関係づけた。戦略を実行する上で,それに関係する重要成功要因がまず認識される。重要成功要因とは,顧客満足,品質,納期に関する信頼性,技術力などの,戦略を成功させるための鍵となる要因である。非財務的尺度はこれらの要因を数量化して目標値を設定するために利用される。 Fisherの見解を整理すると,戦略 → 重要成功要因 → 非財務的尺度による測定という,重要成功要因を媒介として,戦略と非財務的尺度を関係づけた体系が明確になる。Fisherが示した非財務的尺度の体系には,(1)重要成功要因を測定するための非財務的尺度の決定方法が明確にされていないこと,(2)非財務的尺度と財務的尺度の関係が明瞭ではないこと,という二つの問題点が存在する。第1の問題点について,本稿では,管理会計上の文献で取り扱われている非財務的尺度を(1)物量尺度,(2)比率,(3)ランク付け,の三種類に分類し,その各々について検討を行った。第2の問題点については,非財務的尺度は財務的尺度を代替するものではなく,財務的尺度を補完するものとして位置づけるのが適当である。重要成功要因をコントロールするためには非財務的尺度の利用が有用であるが,コントロールの成果を認識するためには,最終的には財務的尺度によって測定を行うことが望ましい。したがって,各々の重要成功要因の尺度として,非財務的尺度だけではなく財務的尺度も加えなくてはならない。また,それらを設定する際に,選択された非財務的尺度による測定値の増加または減少が,同じく選択された財務的尺度による測定値に与える影響を事前に分析して,その関連性を把握しておく必要がある。重要成功要因を貨幣額で評価する方法としては,(1)実際原価で測定する方法と,(2)機会原価により測定する方法の,2通りの方法を考えることができる。
- 1999-02-25
著者
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